短くも心に残る、多彩な工夫が光る掌編集です
- ★★★ Excellent!!!
火浦マリさんの『小さな果実たち(掌編集)』は、短いながらも日常や未来、ユーモアとペーソスがぎゅっと詰まった素晴らしい掌編集です。どの話も短い中に、発想の工夫や世界の温かさ、時にシニカルな視点が巧みに盛り込まれていて、読者の心に静かに残る余韻があります。
特に印象的なのは、現代社会への鋭い風刺と、子どもの純粋さ、家族や命の尊さを、やさしい語り口で描いている点です。例えば「感情税」や「ネガティブドラッグ」などの設定は、今を生きる私たちに何気ない問いを投げかけてきますし、「宝石よりも」や「ネコの鼻子」は、身近な愛情のかけがえのなさに気づかせてくれます。
また、一編ごとに文体や語り手の個性が変化し、毎話ごとに新鮮な驚きと発見があるのも魅力的。どれも読みやすく、忙しい日々の合間にほっと一息つける、まさに「小さな果実」のような味わい深い一冊です。
これからも火浦マリさんならではの発想豊かな作品を楽しみにしております!