設定の作り込みが随所に感じられる、異世界・現実世界転移物語

「異世界転移もの」の枠組みを用いながらも、その先にある“帰還後”を真正面から描いた点が非常に印象的な作品です。

ゲーム世界での冒険そのものではなく、三年を費やしてようやく現実へ戻ったはずの主人公・御影豊(ミレイユ)が直面する「戻っても終わらない現実」に焦点を当てている構成が、物語に強い独自性を与えています。


とくに秀逸なのは、現実世界へ帰還した後もアバターの姿のままであり、さらにゲーム世界の仲間たちまで一緒に来たという展開です。

帰れたのに何も元に戻っていない――むしろ状況はより複雑になっているという皮肉が、物語に強い引力を生んでいます。

魔法も魔物も存在しないはずの日本が、どこか歪んでいるという違和感も、これから始まる新たな物語への期待を大きく膨らませます。


緻密な設定、丁寧な心理描写、そして“帰還後から始まる物語”という切り口が見事に噛み合った、先の展開が非常に気になる作品です。

異世界ものが好きな読者はもちろん、少し違った角度のファンタジーを求める人にも強くおすすめできる一作だと思います。

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