第2話 創造神アルティマとの対話

「……ここは……?」


視界が徐々に晴れ、俺は辺りを見渡した。目の前に広がっていたのは、まるで幻想のような世界だった。

夜空には無数の星々が煌めき、光の粒が宙を漂っている。遠くには壮麗な宮殿がそびえ立ち、神々の威厳を物語っていた。


「ようこそ、龍馬様。」


柔らかな声が響く。振り向くと、一人の女性が静かに佇んでいた。


「私はこの世界の創造神、アルティマと申します。お会いできて光栄です。」


その声はどこか穏やかでありながらも、神としての威厳を感じさせるものだった。

俺は彼女を一目見て、ただの神ではないことを直感する。


「アルティマ……お前が、この世界の創造神か。」


「はい。そして龍馬様にお願いがあって、ここへお呼びしました。」


アルティマは静かに手を組み、真剣な眼差しで龍馬を見つめる。


「ユーティアの危機を救っていただけませんか?」


その一言に、俺の眉がわずかに動く。


「詳しく聞かせてもらおう。」


アルティマはゆっくりと語り始めた。


「ユーティアには元々、私と共に生まれた破壊神オーディゲルがいました。彼は力の均衡を司る存在として、創造と破壊のバランスを保っていました。しかし……ある時を境に、彼は破壊だけを求めるようになり、自らを魔神へと堕としました。」


「……なるほどな。」


「彼は魔族たちを従え、世界を破滅へと導こうとしています。我々も勇者や賢者を遣わせましたが、魔神の力が強すぎてどうにもならないのです。」


俺は腕を組み、少し考え込んだ。


「お前は創造神だろう? なぜ直接どうにかしない?」


アルティマはわずかに俯いた。


「私も試みました。しかし……私はすでに力の大半を勇者たちに分け与えてしまいました。創造神として世界を維持することはできますが、直接戦うだけの力は残っていないのです。」


「なるほどな。」


納得はしたが、まだ腑に落ちないことがある。


「もう一つ聞きたいことがある。なぜ、お前たち高位の世界が俺の存在を知っている?」


アルティマは少し驚いたように目を見開き、すぐに微笑んだ。


「それは……龍馬様が使う《星銀魔法》にあります。」


「《星銀魔法》?」


「ええ。龍馬様が自身で編み出した固有魔法ですよね?」


俺は小さく頷いた。《星銀魔法》は俺が長年鍛え上げた最強の魔法体系だ。


「実は、その魔法……本来は高位世界の神々が使うような力なのです。」


「……何?」


「しかも、あなたの《星銀魔法》は、我々のものよりもはるかに洗練され、より深淵へと近づいている。正直に言いましょう——あなたの魔法を見た時、私は恐怖すら感じました。」


アルティマは真剣な表情で龍馬を見つめる。


「そして、もう一つ……」


「……?」


「龍馬様の魂は、どう見てもこの世界の存在ではありません。それどころか、より高位の世界に属するような感覚を覚えます。」


俺は言葉を失った。


(俺の魂が、高位の存在……?)


今まで深く考えたことはなかった。確かに、自分は神々の機能をすべて使いこなし、その真価を引き出していた。それは普通の存在では到底できることではない。


(そう言われてみると……確かに俺は、異質なのかもしれない。)


だが——


「……そんなことはどうでもいい。」


俺は肩をすくめ、アルティマを見た。


「俺が何者だろうと関係ない。俺は俺だ。それだけの話だろ?」


アルティマは一瞬驚いた後、微笑んだ。


「……ええ、確かに。」


「それに、お前たちは助けを求めている。ならば、俺のやることは一つ——」


俺は口角を上げた。


「ぶん殴ってやるだけさ。」


アルティマは目を伏せ、安堵したように頷く。


「ありがとうございます、龍馬様。」


その瞬間、アルティマの手のひらから光が放たれる。


「では、ユーティアへ——」


俺の視界が光に包まれ、次の瞬間——


***


薄暗い森の中。


そこは、静寂と冷気が支配する不気味な場所だった。木々は黒くねじ曲がり、どこからか獣のうなり声が響いている。


「……ここが、ユーティアか。」


俺はゆっくりと息を吐き、辺りを見渡した。


「まずは情報を集めるか。」


彼の足が地を踏みしめ、異世界での戦いが始まる——。

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