凡庸な怪談チャンネルが、気づけば歴史の深淵に触れてしまう――
- ★★★ Excellent!!!
Youtube風の語り口から始まって、最初は「冴えない怪談系Youtuberの自虐ネタ」っぽく笑わせつつ、そこから一気にドキュメンタリー調へシフト。鬼男=トニオの過去が明かされるくだりは、軽妙な語り口と対照的にめちゃくちゃ重厚で、戦争や移民の歴史まで巻き込む大河的展開に驚かされた。
特に「鬼のパンツ」と【フニクリフニクラ】の繋げ方が秀逸。読者が誰もが知ってる童謡の背後に、こんな深い移民史や望郷の物語が隠されていたかもしれない…という“もしも”の歴史が一気に説得力を帯びてくる。読み終えた後、自然とあの歌を思い出し、胸がじんわりするような余韻が残る。
文章量も多いけど、Youtuberの地の文=軽さと、トニオの人生=重さのコントラストで最後まで引っ張れる。実在っぽさも強く、「これ都市伝説?それとも史実?」と混乱する面白さがあった。