邪なる"鬼"を、祓い清めよ
- ★★★ Excellent!!!
まず驚かされるのはその世界観。
軍事大国の新兵器暴走により現出した異界、その名もカクリヨ(幽世)。この時点でかなりSFチックかつぶっ飛んだ内容だが──なんとこの世界のモチーフ、史実である。
八王の乱──魏・呉・蜀の三国時代を終結させた司馬一族の西晋。その滅亡の切欠となった出来事が本作の世界観の基盤となっているのである。
"鬼"の力に魅入られた人間というものの醜さたるや尋常ではなく、或る意味モンスターよりも醜悪で悍ましい。一人また一人と、異形に立ち向かう為の"鬼"の力に溺れてゆく様はファンタジーだと言うのに妙にリアルだ。
"鬼"の力に馴染めなかった持たざる者であったが故に、力に溺れることなく正気を保つことの出来た主人公が、"鬼"の力を以て世を混沌に陥れようとする者たちに立ち向かう。
鬼の力を邪気と捉えるならば、それに染まらなかった主人公は邪気を祓うと伝わる桃の申し子=桃太郎。つまり本作は近未来版の桃太郎伝説なのである。
手に汗握るバトル描写も圧巻の一言で、SFとしても、ヒューマンドラマとしても楽しめる本作。読めばきっと、その世界観の虜になることだろう。