名前
YouGo!
ゆうご
名前を間違われたことはあるだろうか。
「ゆうじ」なのに「りゅうじ」、「
私は、何度も間違われてきた。
私の名前は
「ゆう」と読む漢字も、「ご」と読む漢字も多く、間違われることは日常茶飯事だ。今日もまた、手紙の宛名が違っていた。
「誰だよ、
そうぼやきながら、私は手紙の封を切る。
——優吾さま、当選おめでとうございます。あなたは選ばれました。
「……何だ、これ」
書かれた住所は間違いなく私のものだ。しかし、この手紙にまったく心当たりがない。
差出人も書かれていない。中身はただ一行、『当選おめでとうございます。あなたは選ばれました』
何の当選? 何に選ばれた? その説明が一切ないことが、不気味だった。
「……イタズラ、だな」
私はそう思い、手紙をゴミ箱に捨てた。
◆
翌日、また手紙が届いた。
今度の宛名は「
同じ封筒、同じ切手、同じ筆跡。そして、同じ文面。
——祐悟さま、当選おめでとうございます。あなたは選ばれました。たくさんの友達に出会えるといいですね。
「何なんだよ、これ……」
私はゾッとして、手紙をぐしゃぐしゃに丸めて捨てた。
優吾でも、祐悟でもない。私は悠悟だ。
——私は、悠悟……だよな?
その不安を振り払うように、深く息を吐いた。
◆
——翌日。
ピーンポーン。
インターフォンが鳴る。ドアを開けると、知らない男が立っていた。
「よお、
「……どちら様ですか?」
「何言ってんだ雄吾? 友達の顔も忘れたのか?」
「……私に友達なんていません」
男は笑いながら首を振った。
「さては本気で忘れてるな? ほら、高校で同じ部活だった、
そう言われ、男の顔をよく見る。
……確かに、高校にこんな顔の友人がいた気がする。
「安田……
「そうそう、
「何年ぶりだと思ってるんだ。それも急に来て……詐欺だと疑われても知らないぞ」
「ははっ、ひでえな」
吉貴はしばらく話をした後、「また連絡するよ」と言って帰っていった。
しかし、その後、ふと思った。
——本当に、私にあんな友達はいただろうか。
◆
私は急いで自室に戻り、高校時代の卒業アルバムを引っ張り出した。
「どこだ……安田、安田吉貴……あった」
三年三組に、彼の名前を見つける。
「よかった……実在するんだな」
正直ホッとした。彼が私の名前を呼んだとき、妙な違和感を覚えたからだ。
最近、よく名前を間違われる。だから疑心暗鬼になっていたのかもしれない。
気を落ち着かせるように、アルバムをめくる。
……しかし、どのクラス写真を見ても、自分がいない。
「おかしい、おかしい……」
クラスの集合写真にも、部活の集合写真にも——どこにも自分の姿がない。
「いない……いない……ここにも……」
最初から最後まで隈なく見た。
しかし、『悠悟』の名前も、姿も、どこにもなかった。
恐怖が背筋を這い上がる。
「そんなはずはない……俺は、確かにこの学校に——」
アルバムを手放し、思わず壁に投げつけた。
バサッ。
床に落ちたアルバムが無造作に開く。
ふと、目に入ったページ。そこには——
「……
三年三組に、雄吾という名前の男がいた。
そのクラスには、吉貴がいた。
——まさか。
急いでほかのページをめくる。
一組には
しかし——
「知らない……誰だこいつ……」
どの『ゆうご』も、見覚えのない顔だった。
——何だ……何なんだ!
頭がガンガンする。
気分が悪い。耐えられなくなり、洗面所へ駆け込んだ。
蛇口をひねり、冷たい水で顔を洗う。
「落ち着け……ただの、見間違いだ……」
そう思って、鏡を見る。
——違和感。
私は、こんな顔だっただろうか。
私は、こんな体型だっただろうか。
私は——
——私の名前は?
ピーンポーン。
インターフォンが鳴る。
『よお、
それは、知らない男の声だった。
名前 YouGo! @YouGo97208040
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