状況は最悪だ。
羅刹化した清士が美玲の体を奪った上に、Serpensとかいう羅刹たちの組織まで出てきやがった。
それを知った晶子は明らかに動揺していたし、他の隊員たちの間でも混乱が広がっている。
特に、真一は精神的ダメージも相当なはずだ。パートナーの美玲が殺され、その体は清士に奪われたのだから。
「……」
だがアイツは、そんなショックの中でも仲間を守る行動ができた。
これはとんでもないことだ。悲しみで動けなくなるか、怒りで我を忘れて暴走し、そのまま殺されていたっておかしくない。羅刹になりかけたときでさえ、あいつは仲間を守るための行動をした。
「……スゲーよ、お前は。それに比べて俺は……」
清士が羅刹になったことには、俺にも責任がある。清士を試験に落としたのは俺だ。俺がそう判断した。あの判断が間違っていたとは、今でも思っていない。だが、その後の俺の行動は果たして正しかったのか。
厳しい現実を突きつけた。清士の心を折るようなことを言った。清士も大人だ、ガキじゃねえ。あれで分かってくれると思っていた。きっと、【星空】に入って晶子の下で働く。それが、あいつの適職だと思った。そうなるように誘導したつもりだった。
だが現実は……。
「俺が違う行動をしていたら、清士を救えていたか?」
救えていたかもしれない。反省点は腐る程ある。
面談の後、俺たちは清士を一人にした。そうする時間が必要だと判断したからだ。だが、実際はその時間のせいであいつは羅刹になった。
あいつがSOLAを抜けるとき、手引きした何者かの行動を察知できなかった。察知できていれば、少なくとも美玲が死ぬことはなかった。
「考えすぎだ。鉄也」
「うわぁ! ……大空さん! 急に出てこないでくださいよ! ってか、ここ俺の研究室ですよ? どうやって入ったんですか?」
「鉄也。お前はしっかりやれている」
「……!」
その言葉で、俺は少し安心した。そして同時に、こうも思った。
清士が欲しかったのは、この言葉だったのかもしれない、と。
あいつは努力していた。頑張っていた。それを、しっかりと認めてあげられる人がいればよかったんだ。
「大空さん。ありがとうございます」