眩む、残照

　新学期に入って間もないある日の帰り道、周囲の変化に漠然とした抵抗を感じている中学二年生の大地は家の側にある小さな神社に佇む少女を見かける。彼女は偶然にも隣の席になった空気のようなクラスメート、宝井詠亜だった。

　クラスのどのグループにも属さない存在感の希薄な彼女が不思議と気にかかった大地は、彼女の『調べ物』を手伝いたいと申し出る。表立った問題はないものの教室やクラスメートとの関係にどことなく息苦しさを感じていた中、詠亜との触れ合いは大地にとって密かな休息の時間となりつつあった。
　しかし、クラスメートの織りなす不安定な渦は否応なしに二人をも巻き込んでいく。

　子供と大人、その狭間で揺れる思春期の少年少女。彼ら彼女らの、どこにでもあるかもしれない一学期の話。