重厚な世界観、しかし読みやすさは抜群

冒頭から年代や改元の提示。
世界の手触りを一気に作る構えが良いですね。
そう聞くと、「難しい作品なのかな？」と思ってしまいそうですが、そこは作者様の見事な手腕が光ります。

主要キャラの出会いの一連が、危機→救助→正体開示で綺麗に転がり、一気に引き込まれてとても読みやすい。

特に良いのは、さやのキャラクターの立体感ですね。
少年の自己憐憫を叩き折る冷たさと、スキーで転ぶ可愛さが同居しています。
忍具の描写も細かくて、忍法帖らしいワクワクがある。

歴史要素とフィクションの混ぜ方が丁寧で、姫と忍び、そして従者の関係がどう拗れてどう結び直されるのか、続きを追いたくなる一作です。