いきなり死者を蘇らせる禁忌のなかの禁忌を犯す展開から、死者の大軍団による復讐劇でも期待してしまう読者をよい意味で裏切ってくれます。
物語の構造はいわゆるチート開拓、領地経営に属するものですが、この物語を異質なものにしているのは、常に隣にある「静かな死」への向き合い方。
一貫しているのは、生と死への、静かな寄り添いと敬意。ここまで死への敬意を感じる作品は見たことがありません。
特筆すべきは、その筆の静けさ。
作中、何度も「ワクワクする胸躍るようなバトル」が描かれますが……その隣にある死を思い、その眠りと静穏を妨げないように、とでもいうような、静謐な筆遣い。
設定もキャラクター造形もストーリーも言葉選びも、全てが死への敬意のために。
お腹が空いた、と誰かが言うとき、共に報われた温かさを感じられます。
禁忌の魔法【ネクロマンサー】を授かった少年と、その侍女である少女の物語。
死を超えて輝く強い結束力は時代や文化を超えて愛されるテーマだと思います。
そこには永遠があり、揺るぎない愛があり、自らの運命を自らの手で切り開こうとする強さがあります。
個人的に気に入っている部分は、敵対関係にある人物として描かれている家族たちで、父にしろ弟にしろ、この先の物語で主人公の好敵手として現れるのだろうなと期待を持たせる冒頭になっています。
そのため、この先のシーンで彼らがどんな対話をし、どのようにして彼らへと打ち勝っていくのか、そんなことが楽しみになる作品だと思いました。
クロムとジーノ。
兄弟間の争いは尊い!!
まずこちらの作品、序盤だけで読み終えると非常に勿体ないです。
最初の展開が若干ダークテイストが強いのと、追われる身分への転落、神への冒涜、愛するメイドとの逃避行となかなか濃厚な展開。
個人的見解ですが、正直逃避エンドは好きではないので、どう逆転劇に転がるのかなあとじっくり拝読してみてがらりと世界が変わりました。
報われないスキルを持ったまま命を終えた者たちに再び命を吹き込み、捨てられた辺境の村をゼロから開拓していく。ここで活きるのがこの一度死んだ者たちのスキル。
かつては敬遠されて誰にも必要とされていなかったものも、この村ではみんながヒーロー。誰しもがそのスキルを必要として、感謝し、そして死んだものが再び生にあふれるものをもう一度生み出すのです。
ただの村開拓と思うなかれ。一度死んだもの達が再び笑い、そして幸せをつかんでいく。
主人公と死んだものたちの抱えているものは非常に大きいですが、それを重すぎない地の文でまとめてクールなダークファンタジーに生ある光の部分をほっこり照らしてくれています。
村の開拓なので登場キャラも非常に多いのですが、それぞれ個性的でしっかりした立ち位置なのでするっと入りやすいのもお勧めです。
禁忌のスキルを授かってしまったばかりに領主の息子という立場から一転、処刑されかけ、辺境の村に逃亡することになった男の再生の物語です。
主人公「クロム」は、禁忌とされる【ネクロマンシー】を授かってしまいます。
ネクロマンス―――それは死者を蘇生し、アンデッドを使役する恐ろしいスキル。過去にはこのスキルを持つ者が死者の軍勢と共に国を滅ぼし、世界に大きな傷痕を残したとのことで、人々から忌み嫌われていました。
幼馴染には嘲笑され、領民には石を投げられ、親父からは腫れもの扱い。
更には次期領主任命と同時に処刑を宣告するほどの嫌われっぷり。
ぶっちゃけ理不尽だとは思いませんか?
勝手に向こうが授けてきたスキル一つで人生が左右されるとか、運ゲーにも程があります。
だから、この手のハズレスキル追放ものは世界を憎み、人を恨み、復讐の炎を燃え上がらせる。
ただし―――クロムは違います。
彼は憎悪ではなく、愛を選んだ。
人を愛し、信じることを選んだ。
だからなのでしょう、彼の力はただ死者を蘇らせるだけではありません。
死者の未練、「生きたい」という強い願いを現世に繋ぎ止め、叶えるための力なのです。
彼は逃亡先の辺境の村を、その力で救っていきます。
自分と同じように呪われた力を持つ者には、新たな解釈を提案し、生かすための使い方を導きます。
好きです、この主人公。
安易に復讐に走ることなく、人の可能性を信じる方向性というのもとても良い。
何より、命を軽んじないのが好感持てますね。
作者様曰く「生と死」や「愛」といった人間の光がテーマになっているようですので、とても繊細に取り扱っているんだな、と、文面から伝わってきます。
◇◇◇
領主の長男ですがネクロマンシーを授かったせいで処刑されかけました。蘇らせたメイドや仲間達と共に辺境の村を開拓していたら、いつの間にか国になりました
ハズレスキル追放ざまぁ系とは違う、温かな読み味を探している方。
辺境の村の再生、そこに住まう人々の成長、愛の物語をお探しの方。
どうぞ、ご一読ください。