忙しなく過ぎる日々に疲れたら

 主人公は日々に心をすり減らした社会人の男性。
 彼は溜池公園の長椅子に腰掛けて柵の向こうに浮かぶ淀んだ色の湖面を眺めていました。
 その時、目の前に長い黒髪の少女が現れます。
 彼女は男性をジッと見つめてから、「あなた、ホンキなの?」と聞いてきます。
 男性がどうして自分に声をかけたのかと尋ねると、「月の裏側に行ってしまおうとしていたから」との答えが。

 溜池と彼らを区切る柵の向こう側には、真っ白な白昼の月が浮かんでいました。

 彼女は月に行こうとしている人の鼓動を感じることが出来るようです。
 けれど、月の裏側の保安員でもなければ案内人でもありません。
 ただ最後にちゃんと意思を確認しなければいけないと、説明します。

 男性と突然現れた不思議な少女とのやり取りがとても心地良く、美しい文章に引き込まれます。

 男性は最後にどんな決断をするのか、ぜひ確かめてみてください。
 忙しなく過ぎていく日々に疲れてしまった人におすすめしたい作品です。

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