第4話 リュウコ
???「おかえりなさい、お兄様」
奥から、純白の毛並みでスラリとした、瞳が翡翠色のやや小柄なオオカミが現れた。
リュウノスケ「ただいま帰ったよ、リュウコ」
リュウコと呼ばれたオオカミは、リュウノスケに近付くと、翡翠色の目を細めリュウノスケの首元に軽く頭をすり寄せた。
リュウノスケの瞳は、名の忘れられた小さな花のごとく柔らかな水色をたたえ、リュウコを優しく見つめる。
リュウコはリュウノスケに今日の狩りはどうだったかとたずね、2人は話しはじめるのであった。
リュウノスケ
「…、ううむ、うさぎ一匹とは不甲斐ない…。」
リュウコ
「初めての狩りで獲物を持ち帰るのは立派じゃないの、お父様や師匠は同じ獲物を追いかけて、おでこを腫らして、結局何も取れなかったそうよ」
リュウコは、クスクスと小さく笑った。
その様子を、リュウコより一回り大きいくスラリと細身で、白毛と黄金に縁どられた青緑の瞳を持つオオカミが、洞の入り口の陰からそっと見守っていた。
目を細め、口角をわずかに上げて軽く空を見上げた後、足音もなくどこかへふわりと駆けていった。
赤みを帯びた黄金色の西日が、その背を照らしていた。
日が沈みはじめたころオオカミ達は火を起こし、解体された獲物を切って焼きはじめた。
その夜、リュウノスケの初獲物を含め、その日の狩りの成果を存分に堪能していた。
昼間、オオカミ達が集まっていた洞の一番東端は崖であり、眼下には岩壁に生える木々と川のせせらぎが聞こえる。
川の周辺は背が高く、葉の密度が濃い木々が見渡す限り広がっている。
そこは、様々なもの達が暮らしていた。
今は、ひっそりと静かな雰囲気を醸し出していた。
その木々の隙間から闇夜より濃い黒い影がゆっくりと、オオカミ達の洞へ向かって流れてゆく。その陰に引っ張られるように、4つ足のケモノが姿を現した。
今夜は月がなく、星の瞬きのみの夜であった。黒い影から、赤銅色の双光が垣間見えたと思った刹那、すでにそこには何もなかった。
黒い影は木々や洞に続く道の脇を緩やかに昇っていく。
そこには、大小様々な木の枝を組み合わせて、4本の木々の間が正方形に区切られた箱庭があった。
かげは、そこを目標と定めたがごとく加速しはじめた。
突如、一筋の白銀が、影と箱庭の間に雷撃のごとく割って入った。
つづく
竜騎伝 流川清丸 @godhelp
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