勇気と恐怖

5-1

舟堀タワーでの戦いを経て、ジュンとルイーザは深いダメージを負った。特に心の傷が深刻であることが分かり、ウェンディの指導のもと日々リハビリを繰り返している。


リフィリア王国での療養生活が数日経つが、状況は一向に改善しない。武器を出しても、依然として長時間持つことができなかった。


「ダメだ……どうして武器を持てないんだ。心の問題だけだと思っていたけど……」

「そういう単純な話じゃないのかもね……」


武器を出すたび、舟堀タワーでの死にかけた記憶が鮮明に蘇る。そしてその記憶が恐怖を呼び起こし、結果として武器を落としてしまう。この悪循環が続いていた。


「医者として見ても、この状況は全く分からないわね。ここまで手を尽くしても解決しないなんて……何か呪いにでもかかっているのかしら?」

「呪いねぇ……確かにその可能性も考えて、専門の人に見てもらったけど、呪いはかかっていないって結論だったよな」


ジュンたちは、この現象が呪いではないかと考え、医療施設にいる呪いの治癒専門家に相談した。だが、呪いにかかっている兆候は一切ないと言われたのだった。


「そうだったわね。呪いの可能性は否定されたんだったわ。やっぱり、君たちの心の中にある恐怖心が原因で間違いなさそうね」


ウェンディは頭を抱えて悩んでいた。だが、数日のリハビリを経て気づいたこともある。


「ひとつ分かったことがあるわ。君たちが恐怖を感じるのは、自分たちの武器を出す時だけよね。他の、普通の武器を使う時には問題がないみたいだわ」


ルイーザも気づいていた。市販の武器や一般的な道具なら普通に扱えるのだ。どうやら、ジュンたちの武器の問題は、戦闘の記憶が残る「ジョブ専用武器」に限られているらしい。


「そもそも、ちょっと気になっているんだけど、君たちはどうして武器を出せるの?」


ウェンディの問いかけに、ジュンとルイーザは首をかしげた。そんなこと考えたこともなかった。


「え?ジョブを持つ者なら誰でも出せるんじゃないの?」

「いやいや、普通はレベル6以上にならないと、自分の体から武器を生成するなんてできないわ。まして、2種類も出せるなんて前代未聞よ」


ウェンディの言葉にジュンとルイーザは驚いた。そんな設定があるとは知らなかったのだ。


「考えたこともなかったな……レベル1の時から普通に出せたよ」

「私もレベル1から出せてたわよ」


「レベル1から!?そんな話、聞いたこともないわ。まったく常識外れな2人ね……」


ウェンディは呆れつつも、それ以上この話を掘り下げることはしなかった。今の問題は別にあるからだ。


「ジョブの仕組みは一旦置いておきましょう。今の課題は、この状況をどうやって打破するかよ。このままだと、いずれ強敵との戦いに苦労することになるわ」


ジュンもルイーザも、このままでは冒険に支障が出ることを理解していた。市販の武器でも戦えなくはないが、威力は大幅に落ちるし、何より普段使い慣れている武器を手放すわけにはいかない。


「……確かに、このままじゃ大きな問題になるね。強敵相手だと、この状態じゃ歯が立たない」

「うん、ちょっと荒療治が必要かもしれないわね」

「荒療治?」


ウェンディの口から出たその言葉に、ジュンとルイーザは顔を見合わせた。

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目指すは始まりの異界!探検隊ルイーザと不思議な物語 旅立マス @jhlucky839

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