4-16

「まさかとは思ったけど、これは前の戦いで死にかけたことが原因でトラウマになっているみたいね」

リハビリの様子を見ていたウェンディが、困った表情で2人の元に歩み寄った。彼女は傷の治療を終えた後も、何か引っかかるものを感じていた。そして、それが的中したのだ。


「トラウマ?」

ジュンとルイーザは驚いたように顔を見合わせる。ウェンディは続ける。


「ジョブを持つ者の武器っていうのは、ただの道具じゃないの。所有者のエネルギーや記憶が刻み込まれているものよ。つまり、あなたたちの武器は前回の戦いでの恐怖を記憶している。そして、それに触れることで、無意識にその恐怖が蘇ってしまうの」


「そんなことが…」

ジュンは困惑した様子で呟いた。確かに、ただ武器を手にしただけで全身に寒気が走り、手が震えてしまう感覚は説明がつかないものだった。


「けど、勝ったり負けたりするのは戦いの常でしょう?そんなことでいちいち恐怖を感じていたら、成長なんてできないじゃないか」

ルイーザが悔しそうに言い返す。


「その通りよ。普通は負けた記憶でこんなことにはならない。けど、今回は例外かもしれないわ」

ウェンディは少し考え込むように言葉を選んだ。


「どういうこと?」

ジュンが問う。


「もしかしたら、あの敵の攻撃には精神に干渉する力が含まれていたのかもしれない。ローデンの羽の刃は、肉体的なダメージだけじゃなく、心にも直接影響を与える性質があったと考えられるわ」


「精神に干渉…」

2人はローデンの攻撃を思い出し、嫌な感覚が蘇る。あの時感じた説明のつかない恐怖。それが単なる錯覚ではなく、攻撃そのものが持つ効果だったとしたら、合点がいく。


「けど…それなら治す方法はないのか?」

ルイーザが不安そうに尋ねる。


「それが問題なのよ。心のダメージは医学的に治すことはできないわ。それは自分自身で乗り越えるしかない問題なの」

ウェンディの言葉に、2人の表情が一瞬固まる。


「そうか…心の問題か。ずいぶんと厄介な試練を突きつけられたな」

ジュンは苦笑いしながら肩をすくめた。


「けど、乗り越えなきゃ私たちの冒険は終わってしまう。それだけは絶対に嫌」

ルイーザの言葉には力がこもっていた。


「その通りだ。こんなところで立ち止まるわけにはいかないさ」

ジュンも微笑み、強い意志を見せた。


ウェンディは彼らの決意に感心した。通常の人間なら、この恐怖に打ちのめされるところだ。しかし、彼らの心の強さなら、この難題を乗り越えられるかもしれない。


「あなたたちならきっと大丈夫よ。焦らず、少しずつ進めばいいわ」

彼女はそう言うと、励ますように微笑んだ。

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