今改めて読むべき作品
- ★★★ Excellent!!!
書かれたのは2016年。今から約10年前。
そして、作者様がもうこの世にはいらっしゃらない方である事実を、読み終えた今、初めて知った。
今こそ、読み返すべき時期にある小説である、そのような気がしてならない。
国語の試験のように、この物語について要約を書くのであれば、
性的な嗜好に対する問題を抱えた青少年たちが時に絆を確かめ合い、時に傷つけ合いながらそれぞれの問題を乗り越え、それを受け入れ、社会で生きていく力を養っていく物語
なのだろうか。
でも、そんな言葉で片付けたくない。
この、とてつもなく心が動いたこの気持ちを、作者様にはもうお伝えすることができない。
胸がいっぱいだ。
だから、レビューする。
登場人物があまりにも浅はかだ。どいつもこいつもこの野郎と言いたくなる位に。そしてあまりにも魅力的だ。どいつもこいつも。
列挙する。
腐女子の三浦はあまりにも浅はか。
幼馴染の亮平はあらゆる問題から目を背けすぎ。
お前は脳筋なのか小野。
ケイトは大人としての役割を放棄してはいないか。
マコトは衝動に弱すぎないか。
ファーレンハイト、なぜその選択を。他にどうにかできなかったのか。
そして、主人公。なぜ大阪に行く?
多分、みんな、それしか答えがなかったのだ。それがおそらく最適解だったのだ。彼らにとって。
でも、これは、2025年の私が読んでいる。
2023年位から、物事の捉え方や価値観は大きく変わったように思う。
もしこれを2016年の私が読んでいたら、どのような答えを出しただろうか。
あの時代に読んでいたら。
それをものすごく知りたくなった。
この物語の登場人物には、誰ひとり単純な悪人はいない。
それぞれが抱える苦しみと向き合いながら、主人公を鏡にして、自分なりの答えを見出していく。それぞれがそれぞれに。それぞれの時代で許される最大限の答えを出していこうとする。
この時代にこれを書くことができた作者様に、嫉妬してしまいそうな位、一気に読んだ。
いろんな感情が湧き上がってきた。
これは、読む人によって、多分全員答えが違うだろう。
作者様が、今を生きていたなら、何を書いていたのだろう。
聞いてみたい。
思いが溢れてしまった。
とにかく読んで欲しい。
今の時代だからこそ読んで欲しい。
間違いなく名作だ。
そして今の時代の感性でこの作品を改めて映像化してほしい。
おそらく、全く違う答えが出てきそうだ。