濃密な文体で綴られる、古典的な怪奇小説の空気を味わいたい方におすすめです。海溝の底で動かなくなったポッド、残り十七時間の人工酸素、そして外殻を貫いて届く讃美歌のような歌声。冒頭から閉塞感と緊張が途切れません。外へ泳ぎ出た先に広がる、玉虫色の流線形が飛び交う海底の描写は息をのむほど美しく、同時にその鮮やかさが説明のつかない不安をかき立てます。口のない魚が行き交う静かな渓谷に、幼いころ見た深海映像を重ねて安らぐ場面も印象的でした。「自己認識の話」という紹介文の意味を、ぜひ全5話を通して確かめてみてください。
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