概要
「今夜は、どこですか」。三十年、私は毎晩、絵の女に挨拶してきた。
町の小さな美術館の第三展示室。黒い服の女の肖像画は、毎晩一か所だけ変わり、朝には元に戻る。夜間警備員の私は、三十年、それを見つけては、勤務日誌の余白に小さく書いてきた。
定年まで、あと五日。月曜の夜、絵の中の壁に、今年のカレンダーが掛かっていた。金曜の日付に、丸がついていた。
定年まで、あと五日。月曜の夜、絵の中の壁に、今年のカレンダーが掛かっていた。金曜の日付に、丸がついていた。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!女性の肖像画が湛える微笑――心に残る静かな変化へと紡がれて
町のとある小さな美術館。
第三展示室の奥にかかる女性の肖像画は百年ほど前に描かれた作者不明の絵画でした。
この物語は夜間に巡回警備する古賀さんとその肖像画との間に起こる不思議なお話です。
美術館の夜間警備員として勤め始めてから一ヶ月。
いつもの巡回の際、古賀さんはある変化に気づきます。
それはこの絵画が毎晩、一箇所だけ変化を伴うというものでした。
口元にたたえる微笑。
手元の書物の動き。
窓の外に映る景色。
それらは些細な変化ですが、それらが起こるのは夜間のみで翌朝九時の開館までには、元に戻っているというから引き込まれます。
古賀さんはその変化を業務日誌の端にある誰も読まない余白に…続きを読む