概要
禁じられた三つの音だけが、妖鬼を殺す。斬るのではなく、迎える。
その声は、いつも、あたしにだけ聞こえた。
助けて。ここから出して。土の底から、死んだ者たちの声が、名前を手さぐりしてくる。声を出せば、誰かが傷つく。だからあたしは、口をつぐんで生きてきた。
十七の少女ハルは、祖父とふたり、夜ごと廃寺で妖鬼を祓っている。妖鬼とは、人が吐きすてた恨みのなれの果て。ある夜、祖父を守りたい一心で、ハルは飲みこんできた声を、はじめて自分の意志で放った。詠唱もいらず、ひと息で術になる、禁じられた三つの音。里の者が「悪魔の音程」と呼んで恐れた、声の三音の力だった。
だがハルは知る。妖鬼を殺すその音は、誰かを犠牲にして平穏を買う、古い世界の道具でしかないことを。据えるのでも、断つのでもない。手をつなぎ、恨みを分けあって鎮める――ハルは、そんな道を探しはじめる。
半妖
助けて。ここから出して。土の底から、死んだ者たちの声が、名前を手さぐりしてくる。声を出せば、誰かが傷つく。だからあたしは、口をつぐんで生きてきた。
十七の少女ハルは、祖父とふたり、夜ごと廃寺で妖鬼を祓っている。妖鬼とは、人が吐きすてた恨みのなれの果て。ある夜、祖父を守りたい一心で、ハルは飲みこんできた声を、はじめて自分の意志で放った。詠唱もいらず、ひと息で術になる、禁じられた三つの音。里の者が「悪魔の音程」と呼んで恐れた、声の三音の力だった。
だがハルは知る。妖鬼を殺すその音は、誰かを犠牲にして平穏を買う、古い世界の道具でしかないことを。据えるのでも、断つのでもない。手をつなぎ、恨みを分けあって鎮める――ハルは、そんな道を探しはじめる。
半妖