概要
「味がしない」と振られた。だから一皿ずつ、誰かの味になる。
二年同棲した恋人・美玖は、最後に二人分の夕食を並べて言った。「あなたと食べるごはんは、味がしないの」。鍵を置いて出て行った夜、俺・瀬川悠人(二十八)はシャッターの下りた商店街で「はじめての十二皿・水曜夜・残り一席」の貼り紙を見つけ、受講料を前払いした。返金不可。
同じ班になったのは、キッチンスケールを持参して全部を量る無愛想な年上の女性・高階千紗。彼女は一度も味見をしないまま、俺に匙を差し出した。「味、見てください。しょっぱいか、薄いか、言葉で」。
千紗は一年前から味覚を失っていて、俺は彼女の「味見係」になる。味がしないと言われた男が、誰かの味になる。七晩練習した肉じゃがを一口食べた千紗が、一年ぶりに「……甘い」と言った夜から、十二回の教室は、二人が互いの「食べてほしい人」を探す時間に変わっ
同じ班になったのは、キッチンスケールを持参して全部を量る無愛想な年上の女性・高階千紗。彼女は一度も味見をしないまま、俺に匙を差し出した。「味、見てください。しょっぱいか、薄いか、言葉で」。
千紗は一年前から味覚を失っていて、俺は彼女の「味見係」になる。味がしないと言われた男が、誰かの味になる。七晩練習した肉じゃがを一口食べた千紗が、一年ぶりに「……甘い」と言った夜から、十二回の教室は、二人が互いの「食べてほしい人」を探す時間に変わっ
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