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概要
「荷物」と訳された一語は、北の海辺では違う意味だった。
北の国から嫁いできた継母は、私を名前で呼ばなかった。「ミルカ」――辞書を引くと「荷。運ぶもの」とあった。八つの日から私は返事をやめ、十六で家を出た。十年ぶりに帰ったのは葬式のためだ。読み上げられた遺言は一行だけ。「家と畑とかまどは、わたしの荷物に」。相続人の名は無く、家は叔父のものになるという。片付けに入った台所で、私は下手な字で埋まった一冊の帳面を見つける。そして毎年秋に来る北の塩売りが、その一語の訳を聞いて顔色を変えた。
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