概要
母がほしかった。それだけだった。
中学のとき、僕は人に言えないことをひとつ持った。それを持ったまま十年、この家の食卓で飯を食ってきた。
僕が先に覚えたのは、襟だ。
白い。汗の染みがない。アイロンの筋が肩の線に沿ってまっすぐ通っている。シャツの皺は肩甲骨のところにだけあって、そこは椅子の背が当たる場所だから、皺があるほうが正しい。
髪は後ろでひとつに束ねてある。結び目の高さが毎日同じだった。うなじの細い毛が朝の光で白く光る。石鹸の匂いがした。柔軟剤ではなく、石鹸のほうの匂いだ。
――本文より。
全十二章・完結。
※放火、いじめ、自殺に関する描写を含みます。この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
僕が先に覚えたのは、襟だ。
白い。汗の染みがない。アイロンの筋が肩の線に沿ってまっすぐ通っている。シャツの皺は肩甲骨のところにだけあって、そこは椅子の背が当たる場所だから、皺があるほうが正しい。
髪は後ろでひとつに束ねてある。結び目の高さが毎日同じだった。うなじの細い毛が朝の光で白く光る。石鹸の匂いがした。柔軟剤ではなく、石鹸のほうの匂いだ。
――本文より。
全十二章・完結。
※放火、いじめ、自殺に関する描写を含みます。この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
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