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概要
帰ると、部屋は最初から一人分だった。
「帰ったら、ちゃんと——」
通話の文字起こしに残っていたのは、その一行だけだった。四十二分も話したはずの相手を、志賀朔は思い出せない。かけ直した番号は、もう使われていなかった。
そのとき自分は「あとで」と答えた気がする。——誰に。
志賀は、市の統合記録整合室の監査官。記録の食い違いを見つけ、正しい方へ確定させるのが仕事だ。その彼の部屋が、ある木曜の夜、「最初から一人分」に整っていた。歯ブラシは一本。契約書の入居者は一名。それなのに体は、ベッドの右半分を空けて眠る。
台帳にない町名。飛んだ番地。時間の合わない壁。小さな矛盾をたどるうち、男は、記録から消された誰かの輪郭に近づいていく。
間違っているのは、自分の記憶か。世界の記録か。
静かなミステリーSF。全43話・執筆済み。毎日朝7
通話の文字起こしに残っていたのは、その一行だけだった。四十二分も話したはずの相手を、志賀朔は思い出せない。かけ直した番号は、もう使われていなかった。
そのとき自分は「あとで」と答えた気がする。——誰に。
志賀は、市の統合記録整合室の監査官。記録の食い違いを見つけ、正しい方へ確定させるのが仕事だ。その彼の部屋が、ある木曜の夜、「最初から一人分」に整っていた。歯ブラシは一本。契約書の入居者は一名。それなのに体は、ベッドの右半分を空けて眠る。
台帳にない町名。飛んだ番地。時間の合わない壁。小さな矛盾をたどるうち、男は、記録から消された誰かの輪郭に近づいていく。
間違っているのは、自分の記憶か。世界の記録か。
静かなミステリーSF。全43話・執筆済み。毎日朝7
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