概要
十一年、百三十二回。存在しない借金を返し続けた長女の物語。
「お姉様は金遣いが荒いから」——妹はそう言って、わたしの婚約者を取りました。父も母も頷きました。
十一年。わたしは月に一度、家の借金を返し続けていました。百三十二回。自分の名義で、自分の持参金で、誰にも言わずに。
家族はその出金を「長女の浪費」だと思っていたのです。
わかりました。では帳簿と鍵をお返しします。名義も一緒に。
三月後、オルグレン伯爵家は破綻しました。返済していたのがわたしだと、誰も知らなかったからです。
——けれど本当に恐ろしかったのは、そのあとでした。返済先の商会に足を運んだわたしに、若き会頭はこう言ったのです。
「その借用書、十一年前から一度も有効になっていません」と。
わたしが返し続けていた借金は、最初から存在しませんでした。
十一年。わたしは月に一度、家の借金を返し続けていました。百三十二回。自分の名義で、自分の持参金で、誰にも言わずに。
家族はその出金を「長女の浪費」だと思っていたのです。
わかりました。では帳簿と鍵をお返しします。名義も一緒に。
三月後、オルグレン伯爵家は破綻しました。返済していたのがわたしだと、誰も知らなかったからです。
——けれど本当に恐ろしかったのは、そのあとでした。返済先の商会に足を運んだわたしに、若き会頭はこう言ったのです。
「その借用書、十一年前から一度も有効になっていません」と。
わたしが返し続けていた借金は、最初から存在しませんでした。
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