バタバタしていて、【第九章】連載開始のお知らせをすっかり失念しておりました。
反省とお詫びの気持ちを込めて、少し早いですが第九章のあとがきを綴らせていただきます。
※ネタバレを含みますので、避けたい方は7/15(火)の第九章完結更新までお待ちください。
作中で主人公・緑光の祖母が口にした「蒔かぬ種は生えぬ」という言葉は、
実は私自身の祖母が遺してくれた言葉でもあります。
寒さの厳しい冬の夕暮れ、ひとり暮らしだった祖母は入浴中に気を失い、そのまま帰らぬ人となりました。
苦労の多い人生を送った人だからこそ、きっとあたたかい布団の中で穏やかに旅立つのだと信じていたのに、
どうしてこんな最期を迎えなければならなかったのか。
想像とは違う祖母の姿を前に、何を恨めばいいのかもわからず、
遠くの夢を選んで地元を離れた自分の選択が間違っていたのではないか、
そばにいれば助けられたのではないかと、強い自責の念に駆られました。
そんな折、遺品整理の途中で何気なく開いた祖母の日記にあったのが
「蒔かぬ種は生えぬ」
という言葉でした。
何もしてあげられなかったという後悔に沈んでいた胸に、この言葉が深く沁みました。
だからこそ、これからは別の誰かに。
困っている人に手を差し伸べられる自分でいよう。
誰かの心に、たとえ小さくても何かを残せるように、自分なりの種を蒔いていこう。
そう噛み締めて、ようやく前を向くことができました。
これが、祖母が私に蒔いた最期の種だと信じて、今も生きています。
博識で、料理上手で、話すと不思議と心が軽くなる――
私がずっと憧れ、近づきたかった大切な人のひとりです。
「第九章 すべての絵師を処せ」を
最後まで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
次回「第十章」では、緑光のクラスメイト・東雲ぼたんの秘密に迫りつつ、変わりゆく緑光の姿が彼女の目にどう映るのかを描いていきます。
引き続き
「RGB:僕と浮世離れの戯画絵筆 ~緑色のアウトサイダー・アート~」
を応援いただけましたら幸いです。
