いつものように無邪気な僕ら。ちっぽけなことで大笑いしてる私達。見向きもされなくたって構わない。側から見ればつまらなくとも僕らにとっては、私達にとっては大切な居場所。誰の支配もない、秘密基地。
突如ネットワーク上に現れた匿名プログラマー。奴の描くプログラムはまさに現代の科学技術を革新的に凌駕するものでありその存在はたちまち一部のネットユーザーから世界へと轟かす。
遂に奴は世間に正体を公表。予想外なことに奴の正体はティーンネイジャーの少年だった。後に彼は同じティーンネイジャー達と会社「TN」を設立し一つ目のプロジェクト、究極の若年層型SNSを完成。企業、研究機関、国レベルで見過ごすことのできない世界的企業へと成り上がる。
それからTNは二つの同時巨大コンテンツを立ち上げる。それこそが後に世界的大ヒットを引き起こす革命的なゲームだった。
一つはMOBAゲーム、もう一つはシューティングゲーム。両方とも対人戦ゲームを立ち上げたのは策略かのようにTNは両タイトルの世界大会を開催することとなる。両タイトルの優勝者には特性の仮想アイテムが贈呈されるのだがその中身が後に世界の命運を分けることとなる。
最初に開催されたのはMOBAゲームだった。優勝チームのリーダーは少女であり、アイテムの贈呈もその少女のみに贈られた。TNの目論見は本当なのかどうか彼女自身は興味がなかったが彼女は国の研究機関にアイテムの解析を了承した。
その目論見とは2タイトルの優勝アイテムには世界そのものを凌駕するTN最大の革新的技術、その設計プログラムが2つに分解した形で搭載されているというもの。世間は半信半疑だったものの国の研究機関の解析によりその目論見が本当だと発覚。世界は大混乱を招いた。後にアイテムは国家機関に押収され彼女は世間からの姿を消す。事実上、若者で流行中の世界的ゲームが世界の根幹を握っていることとなる。
それから世界各国は2つ目のタイトルの大会に向けて独自の機関を設立。そのゲームのプロゲーマーをはじめトッププレイヤー達は自身の実力が国の未来そのものだと自覚する。中には妨害工作を行う国家やAI学習型プレイヤーを開発する国家、さらにはTNへのシステムハッキングを試みるものまで。世界はサイバー戦争勃発の予兆に緊張が高まる。
そして遂に2つ目の優勝者が決まった。優勝者は少年だった。すぐにアイテムは国家に回収され解析が始まる。1つ目の公開された設計プログラムと照らし合わせる国家機関。そこに少年少女の姿は見られなかった。
しかし事態は一変。プログラムを完成させるには1つのアクセスコードが必要なことに。世界そのものを変えるプログラムが立ち上がることは未だできなかった。アクセスコードの開示に焦る国家機関。まさに世界の状況はサイバー冷戦と言わざるを得なかった。
選択技としてはもう非人道的行為に走る他なかった。国家はTNの最高責任者の所在を特定。倫理が問われる形でのコード入手に急ぐ。
突如現れた天才プログラマー。彼が作り出した最高峰のプログラム。それは現代型AIを個人的に改良して偶然編み出した次世代型AIだった。次世代型AIは彼の思い描く未来そのものを実現した。彼にとってはそこが最高の遊び場だった。
後に彼は次世代型AIの設計プログラムを2つのアイテムに分解する形で搭載した直後、バックアップを取ることもなく既存の次世代型AIを抹消した。アクセスコードは世界で唯一優勝者二人のみが分かる形で彼らに提示した。世界の未来を二人の優勝者に託した、それが答えだった。
TNの彼が国に無残な形で抹殺される頃には優勝者二人の行方など世界はとうに分からずじまい。でも確かにそこに二人の少年少女はいた。
もういっそ、全部バラして流そっか?あそこに。
あそこ?
あそこだよ?
ああ、あそこか。
僕らの、、、
私達の、、、
彼が築き上げた1つ目のプロジェクト。それは決して大人達が介入することも認知することもできない僕達、私達子供だけが入れる特別な場所。毎日面白い波が荒れ狂う「秘密基地」のような場所。
彼はずっと不自由を抱えていた。目の前に立ちはだかる大きい壁。それに逆らうことは許されない。何よりそんなつまらない僕らをつまらなそうに見る奴らが嫌で仕方なかった。でも今は違う。この世界は箱庭。自分の思うままに世界の構造そのものを変えられる。そうここは、僕だけの実験場だ!
結局「秘密基地」ってなんだって?それはなんていうのかなぁ僕らの溜まり場みたいなもの。時には友達と踊ってみたり、いつもの音楽にふけってみたり。変なミームが流行ってて笑っちゃうことも。多分、大人達からしたらつまらないものかもしれないけど僕らにとっては最高な思い出。そんな日常的な概念みたいなものを言葉で表せというと、きっとそれは、
ポータル
〜完〜