「カニ(猛毒有)を食べたいんですね?」
【感情】を剥奪されてしまったから。
うなずきはしない。
不思議そうな。
金色の眼を覗き込んで。
「知育しますか」
謎の言葉を。
魔王はつぶやいた。
手を握り。
魔力で編んだ紐を。
腰に巻きつけて。
連れてきた湖は。
澄んでいた。
泡がわいていることもなく。
瘴気で。
木の根が。
粘ついてることもない。
ミラトスが創った。
第1審臨には。
毒沼や毒花などが。
嫌な咲きほこり方をしているが。
数カ所。
あきらかに歪んだ空間がある。
魔王が触れると。
薄氷のように砕けて。
美しい。
湖が現れた。
自然の。
宝箱。
「宝探しですね」
ミラトスが仕組んだ。
魔王にはわかる。
たくさんの。
宝探しを。
楽しんでと。
ミラトスは。
笑うのだ。
「いいですか」
「枝の先に糸をつけて」
「審臨にいた【よくわからんもん】を」
「つけて、湖にいれます」
ミラトスは。
いたずら好きだ。
本当に。
なんかよくわからん生きものは。
なんかよくわからんまま生きていた。
「ほら、釣れた」
魔王が糸をひきあげれば。
エビや。
カニが群がっていた。
「生で食べません!」
「エビを頭から丸のみしません!」
「良い子は食べられる分だけ釣ります」
金色のこどもは。
なんもしらん。
そんな顔をして。
魔王が釣り上げたエビとカニを。
全て頬につめこんでいた。
「託児所、はよ」
倒れ込む魔王の背を。
金色のこどもは。
ペチペチと。
小さなおててで。
叩いた。
釣りが楽しいと。
なんとなくわかるのか。
金色のこどもは。
あきることなく。
釣っては置いて。
釣っては置いて。
カニと。
エビまみれになっていた。
「シュールですね」
魔王は。
金色のこどもが釣りあげた。
カニやエビを。
片っ端から。
逃していた。
「全部食べたら、お腹を壊しますよ」
難しいか、と。
魔王は。
「ぽんぽんが」
「いたいいたいになります、から」
「ないないしましょう」
わざわざ。
言い直した。
言い直したのに。
首を傾げおってからに。
と、嘆く。
「ぽんぽん」
「たいたいは、ないない」
「ばいばいしましょう」
身振り手振りで。
食育の大切さを教えていく。
「知育の大切さを学びましたよミラトス」
うつ伏せになり。
倒れ込む魔王の背に。
金色のこどもは。
カニとエビを。
ありったけ。
つめこんだ──。
なんか数がすくなくね?
そんな表情で。
魔王を見上げるこどもは。
「どんな【感情】を手に入れるのでしょうね」
楽しみに。
しながら。
とりあえず。
「ないないします!」
見つからないように。
口に詰め込み。
尾がでているエビを。
引き抜くことにした。
優しいゆりかごの中で。
いまはおやすみなさい。
私の。
もう1人の。
【主】──。
「ぽんぽんが」
「たいたいになっても」
「知りませんからね!」
「めっち!」
できたら。
早く帰ってきてください。