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『白み始めた神話たち 〜こぼれ話〜 その7』【優しい魔物と。 好物と。 はぐはぐさん】

「うっそでしょう、をい」


 色々な。
 言葉がまざり。
 大地に擬態した【毒沼】から。
 右の手首から先だけ出して。
 沈んでいる【主】に。
 魔王は。



 「ワンオペ育児」
 「ダメ 絶対」



 と、謎の掛け声と一緒に。
 【主】を引き抜き。



 「託児所がほしい」



 浮かび上がった。
 謎の掛け声と一緒に。
 やはり。
 放り投げた。


 手を離してから0.01秒。
 見つけ出すのに、0.03秒。
 引きずり出すのに0.0012秒。


 【預けた】心臓が。
 バクバクいっている気がして。


 「カニまみれ」


 大量の。
 カニらしきものを銜え。
 両手にもった。
 【主】が。

 「あなた、感情が確かないはずですよね?」
 「それ、猛毒」

 生でバリバリ無表情で。
 食べている姿に。


 ──【ロゼル】カニだ!
 ──カニうまいよな。


 ──知ってるか?
 ──【門番】はな。
 ──なぜか。

 ──すっぽぬけた、と。
 ──カニの太い爪を。
 ──おれの顔面めがけて。
 ──投げつける勢いで。
 ──へし折るんだ。

 在りし日の。
 懐かしい会話に。
 
 「器用なへし折りかたですよね」
 
 甲殻類を。
 いい音をたてて噛み砕く【主】に。
 ちょっと。
 その甲羅は。

 只人であれば。
 持ち上げられない重さで。
 大地を砕く。
 硬い甲羅だと。
 
 「理性は奪われなかった、と」

 ならば。
 知性も残されている。

 そのはずなのだが。
 バリバリと。
 無表情で。
 無心に食べている姿は。

 「ミラトス」
 「あなた」
 「これ」
 「大変な生きものですね」

 ミラトスの。
 幸せそうな。
 笑顔が浮かぶ。

 魔物の身体にも。
 毒は有効だが。
 強い魔力を保持する2人は。
 特になんの変化もない。

 「潜りません」
 「両手のカニを離します」
 「せめて焼きましょう」

 言われている内容に。
 怒るでも。
 悲しむでもなく。

 「全部一気に頬張らない!」

 一瞬で噛み砕き。


 何ももってませんが?


 と、無表情を向ける。
 第1審臨の【主】に。


 「先は長そうですね」
 「離乳食はカニらしきものだった、と」
 

 また、謎の言葉を。
 はいた。

 魔王は。
 これを。
 1から教育するのか、と。


 「またいなくなった」
 
 審臨にはないはずの。
 太陽に。
 ああ、眩しいなあ!
 と、叫びたくなった。
 

 魔王は。
 魔力を練り。
 どこまでも伸び。
 引っかからない紐を。
 

 「腰にでも縛りつけますか」


 つくる決意をした。



 「見た目は天使」
 「中身は」
 「魔物、か」

 天使の見目も。
 翼も。
 美しいが。
 
 ──【地の神】
 ──【あなたは】
 ──【只人の味方ですか】

 彼らは。
 【天の神】とともにあり。
 
 【地の神】が。
 答えに窮した一瞬で。
 
 ──【反逆行為とみなします】

 【天の神】の。
 敵だと判断した。

 
 「味方か敵か」
 「まあ、それは」
 「彼にしか」
 「わからないでしょうが」



 「あなた、そんな眠たがりでした?」



 また、同じ毒沼にはまり。
 半分だけ体をだして。
 大地に預けて。
 目を閉じていた【主】を。
 手繰り寄せる。

 健やかな寝息に。
 呆れる。


 「反動ですかね」


 睡眠時間が惜しいと。
 只人よりよく働き。
 指示も出して。
 現場で働き。


 ミラトスのもとには。
 全く戻らなかった。
 馬鹿な。
 神様。



 大好きだった。
 神様。



 魔王は。
 木の根に腰をおろして。
 カニらしきものをくわえたまま。
 寝ている【主】の汚れた顔を。
 乱暴に。
 手のひらで拭った。

 「ここには」
 「誰も入ってこられません」 
 「禁域ですからね」 

 ミラトスが遺した。


 安全なゆりかご──。
 

 第1審臨。


 「あの方は」
 「どこまで、知っておられたのか」


 只人に。
 神に。
 絶望した存在は。


 全く別のいきものになるよ。


 ──彼はね。
 ──神も。
 ──只人も。
 ──選ばない。


 死の間際に。
 【地の神】が。
 上げた絶望の声は。

 
 怨嗟にみちていた──。


 大量の。
 負の感情にあふれ。
 数千の審臨に。  
 怨嗟は。
 降り注いだ。


 【審臨外】の魔物が。
 生まれ。


 彼らの食糧は。
 只人がもつ。
 負の感情となった。


 「知ったことではありませんがね」


 只人だった【ロゼル】は。
 只人と。
 神と。
 魔物の。
 3つの感情をもつ。


 ──ぽかぽかさんだねえ。


 日光を浴びながら。
 足を湖につけて。
 【ロゼル】を見上げて。
 【天の神】は。


 ──ぽかぽかさんする?

 隣を。
 たたいた。



 みんな。
 笑顔だった。


 優しかった頃の。
 【1人】の。
 只人も。
 一緒に。


 ──お隣いいですか?


 【2人】で。
 ミラトスを。
 はさんで。



 ぽかぽかさんをした。
 在りし日の光景──。



 今は。
 ただ。

 ぽかぽかさんを。
 また。
 みんなで。
 できる日を信じて。




    「寝ながら食べません!」




 小さな。
 新しい【魔物】を。
 守りながら。



 ──【地の神様】は。
 ──なにをなさって。
 ──おられるのですか?


 ──はぐはぐさん。


 「あなたが」
 「挟まれて」
 「はぐはぐされる側なんですよ?」




 はぐはぐさんと。
 ぽかぽかさんが。



 揃う日を。
 信じています。



「手は洗います!」  
「きれいな湖がありますから!」  
「食べたいなら」
「ガラガラ、ペッをします!」  



       

       はぐはぐさんを。
          育てるとしましょうか──。  

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