一ノ宮ひだ

　この世界は二つある。 　一つは、私たちが「現実」と呼ぶ世界。 　もう一つは、選ばれなかったとある可能性が、淡々と生存する場所――オルタネイト世界。 　二つの世界は、決して交わら…

　全てを投げ出したくなった―― 不登校ぎみの少女、小牧エリカは、中学卒業をきっかけに、東京を離れる決意をする。新たに移り住んだのは、北海道の小さな港町。彼女が身を寄せたのは、喫茶…

朗読とは、声を伝って、言葉の海を泳ぐこと。 放送部に所属する女子高生・りんは、自分の声に強いコンプレックスを抱えている。どれだけ練習しても、言葉は意味を失い、音だけが残る。朗読…

あらかじめ決められたこの世界の中で生きる人たちへ。

四季を纏った、十の想い。 季節の移ろいに寄り添う花や果実の数々と、恋心にそっと咲いた言葉たちを、金平糖の粒に見立てて詠み綴りました。 冬の薄さ、春の淡さから、夏の濃さ、秋の…

「四季」に纏わる短編アソート。 不定期更新です。

世界に嫌気が差し、すべてから逃げ出したいと思っていたひとりの少女。 ある夜、そんな彼女は山奥を走る小さな汽車に飛び乗ります。長旅の果てに、夜の闇に包まれたある無人駅に辿り着いたの…

日々はただ続いていく。けれど、私は怖いのだ。 一歩前へ踏み出すことが。 波音が胸を満たす。 何かが始まるわけでも、終わるわけでもない、ただこの儚い瞬間だけがそこにある。 掬…

ただ音楽に身を預ける少女は、夜の匂いを辿ることでしか救われなかった。 行き場のない日々を繰り返す中、出会ったのはギターを抱えたもう一人の迷子――星になりたいと夢見る少女。 冷た…

雨宮美散は、自分が雨を引き寄せる「雨女」であることを自覚している高校生。日々の彼女は、雨に包まれた生活を、涙を零しながら、ただじっと受け止めていた。 しかし、ある日、都波優…