スマホが鳴る。美鳥からだ
「一孝さん、一孝さん、すごいの」
なんか,緑のはしゃいでいる声がスマホから聞こえてきた。
「んー,どうした? なんかあったのか?」
「違うの。夜空が…夜空に雲が見えないの。夜中の快晴だよ」
「んー」
本当に楽しそうな美鳥の声。
「一孝さんも見てみて。何か、夜空が透き通って見えるよう」
「そんなにか、どれどれ」
美鳥にも急かされて、スマホを耳に当てたまま、ガラス戸を開けて小さいながらもあるベランダに出てみる。
「ふわぁ、お兄ぃ、どうしたの?」
眠そうにテーブルに突っ伏していたコトリが起きて目を擦っている。
「美鳥からね、お空が綺麗なんだって」
「コトリも見たい!」
立ち上がってコトリもベランダに出てきた。コトリもここまでは出られるんだよな。
2人で夜空を見上げてみる。街の明かりが、ぼうっと夜空を照らす。確かに,薄い
明かりが空を照らして雲らしきものが見えないな、
「一孝さん、頭の真上に明るい星が見えるよ」
「あっあれえ」
美鳥の声に合わせて、コトリが真上を指差した。
「なんて星かなあ」
「そういやあ、ニュースで月と土星が接近して見えるって言ってたけど、これのことだったんだ」
「土星って輪っか見えるかなあ」
「双眼鏡があれば見れるって言ってたぞ」
コトリが手で輪っかを作って目に当てている。
「こんなことならパパに話をして借りればよかったったな」
コトリはがっくりと肩を落とし,スマホから美鳥の落胆した声が聞こえる。
仕方ない。
「美鳥、視線を左にずらせるか? 三つ並んだ星が見えるだろ」
「えーとっ、見えたよ…… あっ」
その三つ星に重なるように空のキャンバスに銀色の一筆書き。
「流れ星です。一孝さんも見えましたか?」
コトリが笑顔になってオリオン座の方向を指先でクイックイッと強調して指している。
「俺も見えたよ」
コトリか両手の指を組み、流れ星の流れた方向を仰ぎ見た。
「ロマンチックですね」
「あぁ」
しばらく星空を眺めていた。美鳥も同じだろう。こっちのコトリも空を見上げて,うっとりしている。
「一孝さんのおかげで良いものが見れました。ありがとうございます」
「偶然だけどね」
「偶然でも、一孝さんが見せてくれたんですよ。ウフフ」
コトリが幸せの滲み出た笑顔で俺を見上げている。
「なんか、良いことありそう。早く寝て、良い夢みないと」
「そうだね」
「じゃあ、寝ます。おやすみなさい。明日、お話ししよ」
「おやすみ」
スマホの通話が終わった。
片手を上に伸ばして伸びをして,コトリは、もう片方の手で口元をアワアワしている…眠そうだ。
「コトリは早くねないとね」
「お兄ぃは。どうするの?」
「もうちょっと,空を見てるよ」
「じゃぁコトリもみるよ」
と言いつつも、コトリは口元をふわふらさせて,目を擦っている。眠いのが丸わかり。
「夜風にあたって風邪でもひいたらたいへんだから,もう寝ないと」
「お兄ぃと一緒がいいの」
でも、
「コトリが心配だからね。美鳥まで風邪ひいてしまうよ。 どうするの? 見ててあげるから寝よっ」
「そうするね。おやすみなさい」
二人とも,ベランダを出て部屋に戻りました。
「おやすみ」
流れ星はありました。実況です。