どぉーぬ、どぉおーん
どぉーん、どおーん、どん、どん。どぉーん、どおーん、どん、どん。どぉんどぉんどぉん。
海と湖に挟まれた街に太鼓の音が響く。並の音ではない、頭を痺れさせ、腹を震わせる振動。暴力的な、音などではない空気の波。
それはそうだろう、太鼓の大きさは大人が手を伸ばしても届かない7尺7寸。日本刀の長さほどのバチで叩くのだ。
街の人はいう、
「太鼓はバチで叩くもんじゃない。拳で叩くのよ」確かに皮の一面が赤黒く染まっている。鯉口を腹巻きで閉めて半また引きを履き、手に晒しを巻いて3尺のバチを持ち、手を背中まで回して全力で打つ。腹腸も震えるはずだ。全力以上での演舞は2回も持たずに打ち手は次々と替わる。
更に置き打ちだけにあらず、通りを引き回し、家々を回る。叩く方が頭なら尻を家の軒先に突っ込み鳴らすのだ。
どぉーん、どおーん、どん、どん。どぉーん、どおーん、どん、どん。どぉんどぉんどぉん。
男たちの慟哭が人の勲しと、岐佐の海神の威吹きを家々にぶち当てる。こんな堪らないものが吹き荒れれば、疫病、災厄、悪鬼など滅される。
どぉーん、どおーん、どん、どん。どぉーん、どおーん、どん、どん。どぉんどぉんどぉん。
これが一時のみならず、一晩、二晩と続いていく。海で生と生を争う者の漁師街の奉納、岐佐の神社の祭りです。