この物語を書こうと思ったとき、描きたかったのは恋や救いではありませんでした。
長い間、自分の中にあるはずの感情を見ないようにして生きてきた人が、それでも確かに感じてしまう名前のつけられない痛みのようなものです。
本作の主人公は、自分を普通ではないと思いながら生きています。
感情がないと言われ、そうなのだろうと受け入れ、他人と距離を取ることで壊れずにやってきた。
けれど世間から見れば奇妙で、理解されない存在であるおじさんと出会い、はじめて自分の中の違和感や痛みに触れてしまう。
それは救いでも成長でもなく、ただ気付いてしまったという感覚に近いものです。
「宇宙人」という言葉は、現実から逃げるための設定ではありません。誰かと同じ場所にいながら、どこか決定的にズレている感覚。
その孤独を、少しだけ軽くするための言葉です。
この物語が読んだ方にとって答えや慰めではなく、自分の足もとにある「宇宙」を一瞬だけ見つめ直すきっかけになれば、それ以上のことは望んでいません。
月の光とゴミの缶
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