• ホラー
  • エッセイ・ノンフィクション

ギフトを頂きました! 感謝しております!

@pikkataさんからギフトを頂きました、ありがとうございます!
いつも読んで頂き嬉しく思ってます、応援ありがとうございます。
また即興小説を書きましたので、良かったら読んでってください。時系列は169話の直後です。

  タナカと酸素喫茶のヘリウム

「タナカさんがヤバイって感じる怪異だったら相当なもんっすね、気を抜かずに手を貸しますよ」

「ありがとな、お互い生きてまた会おうぜ」 

 元傭兵で国家超常対処局の局員であるタナカは、局に協力してくれる灰川という青年と情報交換を交わして渋谷の街に消えて行く。

 あとは帰ろうかと思ったが、なんか物足りないと感じて少し寄り道していく事にした。

 渋谷は未成年から20代の若者向けの街の印象が強いが、夜の渋谷はバーにキャバクラにナイトクラブといった大人向けの店も多い。

 土地勘のない場所で何処に寄ってみようか目移りするが、とある看板が目に入って何となくそそられる。

「キャバクラのべっぴんフィーバーか、良いネーミングセンスだ。入ってみよう」

 既に酒も入ってるためか独特な名前のキャバクラに興味を引かれ、建物に入っていく。

 エレベーターに乗って3階のボタンを押すが、べっぴんフィーバーは4階の店だ。看板がごちゃごちゃしてて、タナカは店の階を勘違いしてる。

「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」

「なんだか変わった店だな、酸素ボンベがいっぱいじゃないか」

 少し酔ってるのもあって、こんなキャバクラもあるんだなとかタナカは思う。キャバ嬢の人達が疲れた時に吸引してリラックスでもするのか?

 席に案内されて周囲を見るが、店内は静かでキャバ嬢らしき子達の姿が見えない。 

 その代わりに別の席には、ひたすら枝豆を食ってる若い男が居たり、かなり強い霊能力を持ってるけど老師みたいな格好の奴とかが居る。変な店だ。

「ん?メニュー表? キャバクラで席にメニューがあるのは珍し…なんだこれ? 酸素カフェ・オキシジェン??」

 まさかの店間違いだ!それに気付いたが、店に入って何も頼まず出てくのは少し気が引ける。

「濃いめ、多め、硬めの酸素…バラの香り酸素…木星をイメージした酸素…木星に酸素はないだろ…」

 店の名に恥じず色んな酸素があるようで、コーヒーや軽食なんかもあるのだが『酸素コーヒー』『オキシジェン・サラダ』『02枝豆』とか、いちいち酸素が絡んでくる。

「ご注文はお決まりですか?」

「え、ああ、ここは酸素が売りの店なのか、変わってるな」

「今は多様性の時代ですから」

「そ、そうなのか…」

 なんかテキトーな返事だが、とりあえずどうしようか悩む。やはりこういう時は一番人気のメニューを頼むのが一番だ。

「この店で一番売れてるメニューを持って来てくれ」

「かしこまりました、お値段は1200円になります」

 ボッタクリの店ではないようだが、喫茶店で出される酸素の相場の値段など知らない。物は試しだと思って進む事にした。

「やっぱりこの枝豆おいしいな~! O2枝豆、これからの注目種だね!何回食べても飽きないよ!」

 常連っぽい枝豆の若い男が凄い嬉しそうに言ってる、よっぽど美味いのだろうか?老師みたいな人は静かなままだ。



「お待たせしました、こちら当店で最も売り上げが高いメニュー、スーパー変声ヘリウムです」

「酸素じゃねぇのかよ!?」

「はい、当店の自慢は酸素ですが、1時間ほど前に石油王の方から10億円分ほどのご依頼を頂きまして、現在の売り上げナンバーワンはスーパー変声ヘリウムです」

「なんてこった…まぁ良いさ、このストローから吸い込めば良いんだな?」

「はい、ごゆっくりお楽しみください」

 そう言って店員は下がり、タナカの席にはヘリウムの入った壺みたいな容器が残される。

「はぁ…さっさと吸ってキャバクラに行こう、ヘリウムなんて吸うの初めてだな」 

 吸引しやすい太めのストローを差し込んで、壺の横にある吸引ONのスイッチを入れ、タナカは初めてのヘリウムを吸い込んだ。

「……!!」

 美味い!なんか美味しい!、タバコや葉巻とは違う美味しさを感じ、そのまま最後まで吸引していく。

 中東の戦場で激戦を生き抜いた戦友たちと交わしたヘリウムの乾杯、運河を守る任務に就いた時に地元の住民から差し入れられたヘリウム……そんな存在しない記憶が頭の中を過ぎて行く。

「……………」

 堪能させてもらった、帰るとしよう。そう思って席から立って会計へ向かう。

「お会計は1200円です、お味の方は如何でしたか?」

「イイカンジダッタゾ、エッッ!!? ナンダ、コノコエハ!!」

 普段は低音でダンディなタナカの声が、まるで魚とダチョウが歌ってるみたいな声になっていた。スーパー変声ヘリウムの効果である。

「ヘリウムの効能です、当店のスーパー変声ヘリウムは2時間ほど効果が続きますので」

「クソガー!!」

 2時間経過でしか声は戻らないらしく、美味しいけど効果が異常に長い特製の品らしい。安全性もちゃんとしており、変な物質などは入ってないようだ。

 普通のパーティーグッズの変声ヘリウムは効果時間は数秒から数十秒なのに、どうやったらこんな効果時間になるのか不思議だ。

 美味しさの秘密はヘリウムに混ぜられた酸素らしく、酸素バリスタの店主が厳選した酸素が美味しさの秘訣らしい。

「またのお越しをお待ちしております、ぶふっ…! 凄い声になってますよっ…」

「オマエノセイジャイ! ニドトクルカー!」

 こうしてタナカは店から出て行き、この声でキャバクラに行く訳にもいかず帰ったのだった。

 二度と行くかなんて言ったが美味しかったとは思っており、もし機会があれば次は酸素を吸いに行こうなんて、少しだけタナカは思ったのだった。

 渋谷の街にある酸素カフェ・オキシジェン、美味しい酸素が吸いたい時はお越しください。


@pikkataさん、今回もギフトありがとうございます!
これを励みに頑張ろうと思います!

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する