• 現代ドラマ

現在地のメモ――沈黙がつながる場所

音や言葉が途切れた瞬間に、いちばん多くの感情が残ることがあります。
第八章では、映像編集という仕事を通して、「何もないように見える数秒」が、実は最も濃密な時間であることを描きました。

カットとカットのあいだ、言葉が発せられなかった呼吸、暗転のまま続く名づけられない余韻。

出来事そのものではなく、その前後に漂う沈黙の質感が、人の距離や心の揺れをいちばん正確に伝えてしまいます。
三浦由依は、その「消されがちな層」をあえて残し、見えない橋として配置していきます。

音が意味になる直前、意味が沈黙へと溶ける直前、その編集点に立ち続ける感覚は、これまで描いてきた「音」「光」「距離」「残響」と同じく、世界と少しだけ間をあけて関わる人たちの姿とも重なっています。

物語は進んでいますが、同時に、何も進まない時間もまた、静かに積み重なっています。
その呼吸を、今回は“沈黙”という素材でそっとすくい取る章になりました。

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