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「星の影放浪記第三巻」チラ見せ続き

皆さま、クリスマスはいかがお過ごしでしょうか。そして年末年始ですね。
私にとっては地獄もとい、非常に多忙な時期です。1月の三連休あたりまでは、笑顔も休みもなくなります。こんな年末年始があと何十年続くのかと思うと、心底げんなりします🤤

そんな時期に、ちょっと気分転換もかねて、現在執筆中の「星の影放浪記 第三巻」について、前回12月16日に投稿した、チラ見せの続きをしようかと。前回と同じく、主人公の出ない、閑話的なお話です。
また、一部ネタバレ防止等のため、改変しています。

第三巻「美良(うまら)の斎王」あらすじについては、11月14日の近況ノート「星の影放浪記第三巻「美良(うまら)の斎王」進捗状況と、簡単なストーリー紹介」をご覧ください。


※  ※  ※

◎「続・子ぎつねとお巡りさん」

・前回のあらすじ
悪党に捕らえられ、拷問の末に死んだヤスさん、広能さん、土屋君の警官三人。子ぎつねの神様によって霊魂として目覚めるが、復讐に燃える仲間の警官たちが、このままでは悲劇を招くことを察し、どうにかこれを止めようとする。しかし警部どの以下、警官たちの怒りと血の熱さは、ヤスさんたちの想像以上で……。


※  ※  ※

 南都を発った警部以下警官たちだが……。

 騎馬の警部に随行する形で、二十余名が小走りに街道を東に進み、斎王群行を猛追する。
 緩やかだが長い長い坂が続き、西洋式の身体教化の付呪がある制服を着てなお、みな息を切らせているが、それでも眼光は爛々としている。

 そして、斎王群行の護法僧がなにやら唱えた、石仏のある脇道に至る。

(こっちや)
 野太い声が聞こえた。護法僧の声だった。
「うむ、こっちか」
 警部以下、誰も疑問に思うことなく、街道から逸れた道に入る。
 
 そして気が付くと、鬱蒼とした細い道に入り、
「……この道でいいのか?」
 警部も警官たちも、疑問を口にし始める。
 そして森を抜けると、山間の、小さく静かな村に出た。

「……道、終わりましたな」
「そうだな」
 警部たち、トンビの声が響く、そののどかな光景に固まった。

 物珍し気にこちらを見るお婆さんに気づいた警部どのは、
「あー、お婆さん、ちょっといいかね」
 道を尋ねることにした。
「忍円寺っちゅうところに行きたいのだが、どうすればいいかね?」
「ああ、それなら」
 お婆さん、青々とそびえる山を指し、
「あの山の向こうやから、元来た道をぐんと戻るとええよ」

「……」
 警部以下警官たち、どっと疲れが押し寄せた。
「そもそも何でこっちの道に来たんじゃ?」
「警部どのがこっちの道選んだんじゃなかったか?」
「わしのせいか!?」
 もめかけたところで、

「あー、ええですかな?」
 お婆さんが声をかけてきた。
「お巡りさん、南の都から来たんやろか?」
「そうだが、どうしたのかね?」
 問うと、
「そやったら、息子がお世話になっとりますぅ」
 お婆さん、ぺこりと頭を下げた。

 警部たち、顔を見合わせ、またお婆さんに向き直ると、
「お婆さん、その息子さんの名は?」
「安浦康之介いいますわ」
「ヤスさんッ!!」
 察していた誰かが声を上げた。

 警部どの、飛び降りるように下馬し、脱帽すると、お国言葉で、
「母御ッ! ヤスどんは、ヤスどんはッ、まっこて立派な官憲でごわしたッ!!」
 地に手を着いて、部下たちとともに、涙ながらに語り出すのだった。


(警部どの、堪忍や)
 霊魂のヤスさん、警部たちに脱帽して頭を下げ、そして、
(母上、先立つ不孝を許しておくれや)
 その後ろで、広能さんと土屋君、子ぎつねまで悲しそうにうつむいていた。

 
 そして警部たち、ヤスさんの実家の武家屋敷に招かれた。
 そこでヤスさんの兄と弟はじめ、庭先に集まった里の人々の前でも事の顛末を話すと、彼らは涙を流して俯いた。
 しかしヤスさんの兄は、弾けるように立ち上がるや、一族に向け、
「皆の衆! 警部どのがここに迷ったのは、康之介の導きに相違ないッ! わしらも仇討ちに出るぞッ!」
「オオッ!!」
 いずれも髷を残し、和装をまとう里の人々。涙を振り切り、そろって立ち上がった。

 ヤスさんの導きというのは、あながち間違ってはいないが、
(いや兄上、わし、そんなこと望んでおらんよ! 警部どの、止めてんか!)
 ヤスさんたちは慌て、子ぎつねは「あちゃあ」と頭を抱えた。
 
 本来止めるべき警部どの、涙を流して立ち上がり、
「廃刀令も仇討ち禁止もクソ食らえじゃ!! 我ら国は違えど熱き士魂のもののふじゃ! 責任はオイが取る! お国から咎めあらば、この腹かっ捌く! 共に参ろうぞッ!!」

(いや、止めてえなっ!?)

 かくてヤスさんの一族郎党を中心に、元武士で腕に覚えある者十余名、仕舞っていた刀を引っ張り出し、白のハチマキ頭に巻いて、たすきをかけ、警官たちについていくこととなった。

 しかし、
「せやけど、まずは腹ごしらえしてってな」
 出立寸前に、ヤスさんの老母が引き留めた。その時すでに正午を回っていた。
 息子の死を聞き、悲しげに眉を下げるお婆さんの誘いを無下にすることなど、この熱血の警官たちにはできなかった。

 この遅れが、悪党たちの計画を狂わせることになるが、それは別のお話。

 
 さて、腹ごしらえのその間、留守を預かる里の人々は、旗を用意した。
 長老の手により、「安浦康之介之御霊」と書かれた白布を、青竹にくくりつけたもので、

(あーれー……)
(ヤ、ヤスさーん!?)

 旗が掲げられるや、ヤスさんの霊魂は、それに吸い込まれてしまうのだった。



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