自室にて競合他社分析。
「はぁ、またこのパターンか……」
「転生したらスライム……転生したら悪役令嬢……どっかの国の王女って……」
「なるほど、カクヨムのエンドユーザーにはこういうのが刺さるのか……」
息を飲み込む。
「そ、それなら!!!」
iPadのQWERTYが弾ける———
俺、雑賀 太一
最近カクヨムのある小説にハマっている。
『トー横より愛をこめて』
ルカってヴァンパイアが
数学や理科でアンナを全肯定するシーン……
(あれは……痺れたなぁ)
「お!瀬屑さん、近況ノートあげてる……」
「電撃小説大賞……あぁ、まぁ、現実って厳しいもんな」
(読む専の俺には関係ねーけど!)
「ん!?なんだ……このURL」
(向上心がある人だけ?……一応、覗くか!)
俺は、URLをタップする。
突如!
スマホが歪む———足底に初期微動
鳩尾に本震
思考が、コットンキャンディー
ねるねるねるね
視界がサイケデリック
———3.14159265359の渦
「うああああああ!!!」
俺は意識を、
πに委ねる。
◆
「ん……ん?」
艶っぽい17Hz。
(なんだ、今の音)
「え……」
半身起こす。
一面、真っ白な
部屋———
壁もソファーもキッチンも
呼吸を許されていない———
(こ、この……部屋って)
心臓が戦慄迷宮———
「ルカ!?」
ぼやけた女性の声が耳を刺す。
扉が開く。
「んなああああああ!!せ、瀬屑アンナあああああ———!!!!!」
「Σル、ルカ!?ど、どうしたの……?何をそんなに」
「え?ルカだって———?」
辺りを見渡す。
「どこ!?どこにいるんだ、ルカは!?」
「え……?何言ってるのルカ……大丈夫?」
「あぁ……血が足りないの?……採血する?」
腕の内側をこちらに向ける。
「む、無理だよ!俺、医師免許なんて持ってねぇし———」
「ふ……あっははははは!!!」
ハイハットが部屋を揺さぶる!
「おっかしー!ルカ、瞳が全音符だよ?大丈夫!?」
「いくらなんでも寝ぼけすぎでしょ あっはは」
思考は完全休符。
彼女と目が合っている気がする。
直後、
腕時計を眺めるような仕草。
「あ、もうこんな時間!私、美容院行ってくるね?」
「また今度、まつエクやってよね?ルカ!」
瀬屑アンナが掌を向ける。
「あぁ……」
俺は、玄関の金属音を
鼓膜で見送る———
「え」
(まさか……)
……いつもより高い視座!
女性のような陶器の肌!!
顔面ハイジニーナ———!
自分から漂う
免税店と高島屋みたいな芳香!!
これは———まさか、そんな!!!
扉を蹴破る———
気管が焼ける———
廊下にアスリートのような足音が広がる———
「あった!!洗面所!!」
(んな……)
……こ、この顔
———ルカ!!
シャーンドル=ルカ=シルバニア!!
近況ノートにあった、画像のまんまじゃん!!
(ってことは……!)
浅葱群青の咳払い。
「オーバードーズで見える宇宙など、紛い物だ……」
心が鴇羽色———
「うおおおおお!!すげええええ」
「は、速水奨だ———!!声帯が藍染 惣右介、神宮寺寂雷だああああ、す、すげええええー!!」
「顔面は彫刻みたいに美しいし、声は速水奨だし、俺……俺……よっしゃあああー!」
……Σは!
じゃ、じゃない!!
ルカって確か……
天才外科医じゃ……
「ぎええええ、で、できねぇぇぇ〜無理無理、無理〜!」
声がアッチェレランド
「ねぇちゃんの生理でぶっ倒れた俺には、手術なんて、とてもじゃないけどできないよッ」
プレスト
「俺は!……俺はこの先いったい!」
クレッシェンド
「どーすればいいんだよおおおおーーー!!!」
フェルマータ。
ーーーねぇ、
誰か続き書かない?
