【あとがき】
たぶん、2年ほど前のことです。
小説なんて書いたことはなかったのですが、ひょんなことから書く面白さを知り、月一ペースで10本ほど形にしました。
その後、私の考える人生観をエッセイにしたら、憑《つ》き物が落ちたようにアイデアが生まれなくなり、ああ、あのエッセイを書くための予行練習だったのかな?
それも良し、と思っていましたが、いきなり昨夜、新作が生まれました。
この先また書けるのかは、まだ分かりません。
この物語には、ひとつ仕掛けがあります。
ウインストンは、夢の中で過去を書き換え、人生をやり直す機会を得ました。
しかし、代償なしに人生をやり直せるわけではありません。
30代に戻ったウインストンは、71歳まで生きた人生の記憶を、次第に失っていきます。
新しい人生が現実になっていくにつれて、かつての人生は、彼自身にとって存在しなかったものになっていくのです。
彼は、ジェイムスを失わずに済みました。
しかし、その代わりに、ジェイムスを失ってから生きてきた長い年月を失います。
それを幸福と呼ぶのか、それとも喪失と呼ぶのか。
私には、どちらか一方だけでは語れないように思えます。
最後に二人は、いつものように連れ立って歩き出します。
ウインストンにとって、それはもう、奇跡でも人生のやり直しでもないのかもしれません。
ただの、いつもの日常なのです。
濃尾