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これ読んでる人気になってる方もいたと思うんですよ女性の方で

 男なら、バトル飛ばすと非難ごうごう、女なら恋愛飛ばすと非難ごうごうっていうのは、ムーンショット1部の
男にとってのバトル漫画、女にとっての恋愛漫画
https://kakuyomu.jp/works/16818023211859110800/episodes/16818093087051473857
 でいいました。
 で、このアンが地球で言うyoutube liveでラジオ番組やっている中で明かされていきます。
プレビュー↓


 ヴァーレンス王国、午後10時。
「あー、あー。音、入ってますか? こんにちは、アン=ローレンです」
 銀色のマイクスタンドを前に、私は軽く手を振った。緑色のランプが点滅し、視聴者数が「1234」と表示される。相変わらずのんびりした数字だ。


「今日もわーちゃんねる『風まかせラジオ』にお付き合いください。今日はちょっとだけ雲が多いですが、風は心地よくて、なんだかお喋りが止まらなくなりそう。えへへ」
 カチッ、と床に足を置いた拍子に、古びた木の床がきしむ。借りスタジオは古い船倉を改造したらしく、潮の香りがする。マジック・ランプの明かりが、鎧の手入をした跡の薄い傷を優しく照らす。
「まずは一曲、リクエストにお応えして。ミハエル公爵が前に口ずさんでた、あの子守唄を――」
 画面のチャット欄がスクロールする。

(中略)

「――というわけで、いつものコーナー『私の胸の内』。みなさんからのお便りを読ませていただきます」
 手元の封筒の山をぱらぱらとめくる。ほとんどが「剣の手入れのコツ教えて」「好きなタイプは?」といった軽い質問だ。私は真ん中あたりの、水色の便箋を引き出した。
 字はちょっと崩れている。宛名は「風まかせラジオ アン=ローレン様」。
「では読ませていただきます。――『彼氏がナンパすぎて手に負えません』」
 瞬間、喉の奥が熱くなった。視聴者数が一気に跳ね上がるのが見える。


「……えっと、『いつも楽しく拝見してます。私、水色の髪をした、ちょっと胸の大きい魔法使いです。ターゲットは黒鎧の剣士で、口説き方がすごくて……いえ、もう口説かれまくっています。でも、彼、他の女の子にも同じこと言ってて』」
 声が震えた。私はマイクを少し離し、息を吸った。チャット欄が爆速で流れる。


・え、ユーナちゃん!?
・フレッドさんまたか
・修羅場確定


「『……正直、もう地獄の血の池に投げ込めばよろしいですか? アドバイスお願いします。ユーナ=ショーペンハウアー』」
 最後の文字が滲んでいる。涙跡だ。私は便箋を裏返し、机の上にそっと置いた。


(どう答えればいいんだろうなぁ。ユーナ……)
 頭の中で、黒い鎧の男がにやにや笑っている。フレデリック=ローレンス――通称フレッド。元素破壊の剣を振り回し、女の子を口説くのが生き甲斐の、あの破天荒騎士だ。
 マイクの向こうに沈黙が広がった。視聴者数が3000を突破しているのに、チャットが止まる。全員が私の次の言葉を待っている。


「……えっと、その、ナンパ、ですね」
 私は喉をごくりと鳴らした。手の平に汗がにじむ。


「まず、ナンパされるってことは、あなたに魅力があるってことです、あー、はい。胸も大きいし、水色の髪も綺麗。でも、それを利用されるのは、やっぱり嫌ですよね」
 声が裏返った。視聴者数が3500に。


「で、地獄の血の池、ですが……うーん、正直、私も経験ないので、なんとも」
 ぶちっ、と頭の中で何かが切れた。フレッドの顔が浮かぶ。あの日、港町で私を口説こうとした時の、あの屈託のない笑顔。


「でも、ユーナちゃん。あなたがそこまで悩んでるってことは、やっぱり彼のことが、すごく好きなんですよね」
 便箋の涙跡が目に焼き付く。私はマイクに顔を近づけた。


「ナンパされても、本当にイヤなら、最初から無視すると思うんです。でも、あなたは毎回毎回、真剣に悩んでる。それって、彼の言葉に、心が揺れてるってことじゃないですか?」
 チャット欄が再開する。


・マジで恋愛相談してる
・アン先輩も泣きそう
・フレッドさんゴメンなさい


「私、実は――」
 言いかけて、私は口をつぐんだ。スタジオの外で、誰かが剣を鳴らす音がしたような気がした。


「……私、実は、ナンパされる側の経験も、あるんです」
 視聴者数が4000を超える。チャットが再停止。


「高校生の頃、家を出て、剣の修行に明け暮れてた時に、同じ剣士の人に、すごく熱心に口説かれたことがあって。でも、私は『剣が好き』って言って断り続けたんです。それで、その人は、他の女の子と付き合っちゃって」
 私は苦笑いした。今でも、あの時の悔しさは胸に残る。


「だから、ユーナちゃんの気持ち、すごくわかります。ナンパされても、本当は『本気で好きになってくれてるのかな?』って、迷っちゃうじゃないですか。でも、他の子にも同じこと言ってるの見ると、やっぱり悔しい。でも、それでも、やめられない」
 便箋を指でなぞる。涙跡の凹凸が伝わる。


「で、結論なんですが――」
 私は一度深呼吸した。


「地獄の血の池、はちょっと待った方がいいかもしれません」
 チャット欄が爆発する。


・え、それだけ!?
・アン先輩優しすぎる
・フレッドさん更生しろ


「だって、ユーナちゃんが本当にイヤだったら、こんな便り書かないと思うんです。『どうすればいいですか』って聞いてる時点で、やっぱり、彼のことが好きなんですよね」
 私はマイクを両手で包み込むようにした。


「だから、まずは、自分の気持ちに、素直になってみてはどうでしょうか。ナンパされても、嬉しい部分があるなら、それを認めて。でも、他の子にも同じこと言ってるのが許せないなら、それもはっきり伝える。私、剣士ですけど、恋愛も、正直が一番だと思います」
 視聴者数が5000を突破。チャットが流れすぎて、もう読めない。


「ユーナちゃん、もしよかったら、また便り書いてください。私も、あなたの恋の行方、気になります。それと――」
 私はにっこり笑った。


「フレッドさん、もしこの放送聞いてたら、ちょっとは控えめにしてください。ナンパしすぎは、やっぱりダメです」
 スタジオの外で、誰かが
「わっはっは!」
 と笑うのが聞こえたような気がした。私は首を振り、番組を再開した。


「――というわけで、今日はちょっと真面目な恋愛相談になりました。次は、剣の手入れのコツについて、お答えしていきます。まず、基本中の基本、砥石の選び方から」
 視聴者数はまだ増え続けている。私はマイクに向かって、今日は少しだけ、真剣な顔で語り続けた。


(ユーナ、頑張れ。恋は、剣よりも、難しいけど――)
 潮の香りと共に、風がスタジオを通り抜けていった。

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