絵はまだあっちーけど、秋景色のブラックヴァルキリー。9月なんだから涼しくなれ。
プレビュー↓
「で、要するに」
黒いローブの魔法使いが、一同の内輪揉めを見ながら愉快そうに笑っていた。
「君たちは、お互いを殺し合ってくれるのかね? 私が手を出すまでもなさそうだ」
「あー、うるせぇな」
フレデリックが魔法使いを振り返った。
「おめーはちょっと黙っててくれる? 今、大事な話してるから」
「大事な話?」
黒ローブの魔法使いが首をかしげた。
「仲間割れが大事な話なのかね?」
「仲間割れじゃないよ、価値観の相違だよ」
フレデリックが訂正した。
「俺は効率重視、みんなは理想重視。それだけの話」
「それだけって……」
空夢風音が涙目になった。
「あなた、本当に分かってないのですね」
「何が?」
フレデリックが首をかしげた。
その時、サリサが再び動いた。今度は本気のホワイトライガーの力を解放し、白い闘気が彼女の全身を包んだ。
「もういい」
サリサの右目の赤と左目の黄金が激しく輝いた。
「あんたとは話にならない」
「おっと」
フレデリックが慌てて距離を取った。
「サリサ、本気はやめてよ。俺、絶対勝てないから」
「勝てないって分かってるなら、なぜあんなことを?」
サリサが爪を光らせた。
「だから、効率的だからでしょ?」
フレデリックが困った顔をした。
「長々と戦って負けるより、確実に勝つ方がいいじゃない」
「ライガー乱舞!」
サリサの連続攻撃、乱舞技が始まった。白い闘気を纏った爪の嵐が、フレデリックに襲いかかる。
「うわあああ!」
フレデリックは必死に避けようとしたが、二撃目で背中を引っかかれ、三撃目で壁に叩きつけられた。
「痛ったー!」
フレデリックが壁から滑り落ちた。
「サリサ、本気出しすぎでしょ」
「まだまだよ」
サリサが次の攻撃を構えた時、
「待ちなさい」
水鏡冬華が間に入った。
「フレデリックを殺しても、問題は解決しないわ」
「あぁ?」
サリサが眉をひそめた。
「あの黒ローブの魔法使い」
水鏡冬華が指差した。
「あれが本当の敵でしょ? モリガンを操っているって言ったじゃない」
「そうだった!」
アリウスが我に返った。
「僕たち、完全に目的を見失ってる」
「目的ねえ」
フレデリックが立ち上がりながら呟いた。
「でも、モリガンはもう倒したし、任務完了でしょ?」
「完了じゃないよーん!」
桜雪さゆが十二単を翻した。
「根本的な解決になってないよーん」
その時、モリガンがゆっくりと立ち上がった。フレデリックの攻撃でかなりのダメージを受けていたが、まだ意識はあった。
「あの人……」
モリガンが震え声で黒ローブを指差した。
「あの人が、私を操っていたの」
「操っていた?」
空夢風音が駆け寄った。
「どういうこと?」
「私は……本当は……」
モリガンが涙を流しながら語り始めた。
「戦いなんてしたくなかった。ただ、静かに暮らしたかっただけなの」
「静かに暮らしたかった?」
アリウスが驚いた。
「でも、君はケルト神話の戦神じゃ……」
「それも、あの人に押し付けられた役割よ」
モリガンが苦しそうに答えた。
「本当の私は、もっと……」
(中略)
「あー、ついでに俺も反省するわ」
フレデリックが苦笑いを浮かべた。
「背後から襲うのは、やっぱりよくなかったな」
と滅炎剣と滅氷剣を向ける。
ドォキュウウウウウウウウウウウン!
といいつつ背後から炎と霊気の魔力でモリガンを撃つ。大爆発でモリガンがもみくちゃになる。
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは! 反省しながらまたやってる!」
桜雪さゆがツボにはいって大笑いしている。
「え?」
一同が驚いた。
「フレッド、あなた、謝りながら、謝りながらそんなこと…………鬼ですかあなたは」
空夢風音が驚愕した。
「効率重視も行き過ぎると、大事なものを見失うってよく分かったよね? 俺様の行動で!」
フレッドが舌を出し、てへぺろっとする。
「大事なもの?」
水鏡冬華が呆れた表情のまま首をかしげた。
「仲間の信頼とか」
フレデリックが素直に答えた。
「モテる要素とか」
「モテる要素って……」
サリサが呆れた。
「そっちかよ」
「でも、まあ」
フレデリックが照れくさそうに続けた。
「みんながあんなに怒るってことは、俺のやり方が間違ってたんだろうな」
「当たり前よ」
桜雪さゆが笑った。
「やっと気づいたの?」
「気づくのが遅くて」
フレデリックがぺこりと頭を下げた。
「ごめん、モリガン」
「…………」
モリガンが気絶しているので喋られない。
「…………」
「アリウス、魔法でモリガン起こして」
「…………」
もはや引いた顔で無言で起こすアリウス=シュレーゲル
「君も災難だったよな」
フレデリックが苦笑いを浮かべた。
「操られた上に、俺に背後から襲われるなんて」
「そ、そんな……」
