今回火の山の火口でイオリが甦ったマリアと二度目の決闘をします。
このときマリアの剣を防ごうと、クロが防御魔法「天帝妖狐」を使います。
この魔法名は乙一さんの中編小説のタイトルから拝借しました。
『天帝妖狐』は顔中に包帯を巻いた謎の青年夜木が語るホラー譚ですが、物語の詳細については語りません。
とにかく「すさまじい小説だ」とだけいっておきます。
この作品に秋山というどうしようもないクズが出てきます。
粗暴極まりない男で夜木に凄惨な暴力を奮うのですが、夜木はそれに倍するおそろしい復讐を秋山に仕掛けます。
あともう少しで死ぬというときに、ボロボロになった秋山がうめきます。
「神様……」
この言葉に夜木も、そして読者である自分も衝撃を受けました。
秋山は神に頼るような、そんなナイーブなキャラでは全然ありません。
しかしどんな敬虔な信者や宗教家がいう「神様」より、クズの中のクズである秋山がいった「神様」が自分に響きました。
これをいったら怒られそうですが、遠藤周作『沈黙』に出てくる「神様」より、もっと深刻に響きました。
演出、だけではない乙一さんの奥深い人間観察眼に衝撃を受けた、といってもいいかもしれません。
この小説を書いたとき乙一さんはまだ十代でした。
乙一さんが書くホラー小説はどれも無茶苦茶におそろしいですが、この事実も負けず劣らずおそろしいです。
『アガルタのイオリ』第119話 カミが選んだ女
https://kakuyomu.jp/works/16818622176421206781/episodes/16818792439912977532