今回クロが「SEVEN ROOMS」という魔法を使います。
これは乙一さんの短編『SEVEN ROOMS』から拝借しました。
SEVEN~は乙一さんのもっともおそろしい小説で、クロが使うもっともおそろしい魔法の名前にふさわしいと考えました。
姉とまだ幼いぼくが何者かに監禁される。
そこはコンクリートの部屋でなにもなく、部屋を水が流れる溝が横ぎっている。
まだ小さいぼくは姉の頼みでその溝を伝い、ほかの部屋を訪ねて回る。
上流と下流にそれぞれ三つずつ部屋があるのがわかる。
自分のところも入れて部屋は七つあった。
すべての部屋に姉のような髪の長い若い女性が監禁されている。
そんなある日の夕刻六時、部屋の溝を「赤いもの」が流れる。
赤いものは上流でバラバラに切断された女性の死体だった。
姉とぼくは毎日何者かの手によって一人ずつ女性が殺されるという真実を知る……
まぎれもないホラーですが、熱心なジョジョの愛読者で少年ジャンプの愛読者でもある乙一さんらしい熱い展開が最後に待っています。
またたいへん感動的な場面もあります。
もうすぐ自分が殺されると悟った二番目の部屋の女性と、幼いぼくの会話です。
口元に笑みを浮かべて彼女は言った。
話をしていても、時々、微笑むことがあった。
それがぼくには不思議に思えた。
「……なんで、殺されることがわかっているのに、泣き喚いたりしないの?」
ぼくは困惑した顔をしていたにちがいない。
彼女は少し考えて、受け入れたからよ、と答えた。
まるで教会にある彫刻の女神みたいに、彼女の顔は寂しげでやさしかった。
別れ際、彼女はぼくの手をしばらく握り締めていた。
「あったかいのね」
そう言った。
(略)
やがて溝が赤くなって、先ほどまでぼくの目の前にあった目や髪の毛が溝を流れて部屋を横切っていった。
ぼくは溝に近寄り、汚れた水に浮いて流されていく彼女の指を、そっと両手ですくいあげた。
最後にぼくの手を握り締めていた指だった。
ぬくもりをなくして、小さな破片になっていた。
胸の中に痛みが走った」
すごい文章です。
またこのあと、さらに感動的な場面があります。
未読なかたはぜひご一読を。
『アガルタのイオリ』第87話 SEVEN ROOMS
https://kakuyomu.jp/works/16818622176421206781/episodes/16818792438318666868