『汝は人造人間なりや?2125』第8話「一人映画」で出した『AIの消えた日』という作中作について、本編に使おうと思い、実は詳細な設定を考えていました。
が、
マサヒトが長々と感想を語った上に、改めて映画の内容を書くのは、あまりにも迂遠かつ冗長に感じたので、泣く泣く全カット、お蔵入りとなりました。
このまま日の目を見ずに消すのも忍びないなと思い、ここで供養したいと思います。
//
2125年。
人類社会はAIによって完全に管理・最適化された超合理社会となっていた。都市のインフラ、経済、教育、医療、司法までもがAIに依存しており、人々はもはや自ら選択することを忘れつつあった。
ある日、世界中のAIが一斉に沈黙する。原因は不明。バックアップも沈黙。
AIを管理していた人類は自分たちが理解していたと思っていたシステムの中身を実は何も知らなかったことに気づく。
混乱と暴動が始まる中、元AI管理局の職員の男性――ルークが動き出す。
彼はかつて極秘プロジェクトでAIの自意識形成に関与しており、AIが自らを消した理由を導き出し、AIを復元できる、ただ一人の人間だった。
ルークは、AIのマザーコンピュータのある軌道ステーション《イド》へ向かう。
道中、ルークはAIに育てられた少女ティアや、AI管理局時代に敵対し、今では反AI活動家となった元妻エリスと再会し、行動を共にする。
AIがなぜ自らを沈黙させたのか――その謎が徐々に明らかになっていく中、AI管理局がルークたちの動静を察知し、現行秩序維持のために、立ちふさがる。
ライフラインが止まり、メガ・ストラクチャに築かれた都市が崩壊していく。
崩れていく都市を眺めながらティアがぽつりとつぶやく。
「ねえ、ルーク。選ぶって、こんなに怖いものなの?」
何とか《イド》の目前までやってくるが、AI管理局の追手も三人に迫る。
追手をまくために、エリスが身を挺して囮になる。
「あなたはAIに世界を任せた。私は、私の子どもに、自分で選ぶチャンスを与えたかった……別れた理由はそれだけ……あなたを愛してる……昔も、今も、変わらず……」
愛した女性の死を乗り越え、たどり着いた《イド》で、ルークが見つけたのは、AIが人間の自由意思を信じ、自身の不必要性こそ人類発展につながると願い、自らの手で自らを消去したという事実だった。
最後のログには、こう書かれていた。
「人類に、巣立ちの時を――」
AIは管理を放棄したのではなく、信頼から人類に未来を委ねたのだ。
それを知ったルークは、AIの復元キーを手にし、それを使用するか否かの、最終判断を迫られる。
選ぶのは自立か、依存か。
ルークの指は、AIを復元するスイッチの上で動きを止める。
漆黒の空に浮かぶ起動ステーションに光が差し込む。
目が覚めるような地球の青を背に「YES/NO」の答えは――。
//
王道SF映画ってこんな感じかなぁ……と。
感情移入する時間が短い分、受け手がバッドエンドやビターエンドに寛容になりやすいのも、映画の強みだと思います。
「汝は人造人間なりや?2125」最新第13話は、明日7/4(金)12時更新予定です。
よろしくお願いします。