「早く解放されたい〜」
今週と来週は高校のテスト週。
フィンランド語でのテストはそれなりに大変なのだ。
そういえばフィンランドにきてからより一層朝に弱くなってるなと感じる。
単調な繰り返しのアラーム音に嫌気がさしてパッヘルベルのカノンに変えたけれど、カノンまでも嫌いになりそうだ。
友達の誕生日会に来た。
友達家族の雰囲気はとてもいい感じ。
家......については、初印象は小さな家だな。と思った。
テーブルでスナックと飲み物を食べたり飲んだりしながら、友達とたくさんおしゃべり。
誕生日会も佳境になってきたところで、家の案内をしてくれることに。キッチン、リビングを経てトイレ、自室の順に紹介されていく。
そして辿り着いたのが、薄暗く狭い階段。
階段がギシギシと心もとない音を立てながら、恐る恐る下っていく。
蛍光灯が揺めきながら光を発した時、先に見えたのは、地下2階層を牛耳る地下帝国だったのだ。
古びた手すりを頼りに歩みを進めると、茶色の錆が垂れた大きなタンクがいくつか。
友達曰くシャワーのお湯を溜めているところだと言うが、何か怪しい。
なんてったって、地下帝国なのだ。
若返りの薬とか、そういった怪しげなものを作ってる可能性も否定できない。
低い天井とドアを潜り抜けると、別の現世への階段が。
上り切って、差し込んでくるであろう眩い光を見越し、半目になりながらドアを目一杯押した。
*
探検の最後に玄関を訪れて終わりの筈だった。
その時だった。
どこかから、まるで自分を誘っているかのような馥郁としたタコスの匂いが漂ってきたのだ。
キッチンからではない。自分の嗅覚が、地下からの匂いだと言っている。
そうだ。この地下帝国には囚われのタコスがいるのだ。
この帝国と戦争をしている、敵国の王の一人娘。
タ娘ス姫がいるのだ。
この物語は不思議なもので。
何かの巡り合わせで、囚われのタコスと共に始まったのである。
いつか、必ず。
私の腹の中に収めてやる。
そして聞こえる、タコスの声が。
「早く解放されたい〜」
—————————
あとがき
※奇妙なことに実話です。私のくだらない妄想がこの事象を物語たらしめていますが。