ゆめみるる様
今回の五句も、季節感・感覚表現・生活実感がよく揃っていて、とても安定感があります。それぞれに「視覚・聴覚・嗅覚・触覚」がきちんと立ち上がっており、読者が情景に入りやすい構成です。では一句ずつ講評・採点・添削案を示します。
🌾① 枯れすすき 微風にそよぎ 夕寂し
評価:88点
良い点
「枯れすすき」「微風」「夕寂し」と、秋末〜初冬の静寂が美しくまとまっています。
音の少ない世界を“そよぎ”で上手に可視化しています。
余韻のある終止が好印象。
惜しい点
「微風にそよぎ」は意味がやや重複気味(風+そよぐ)。
叙述がやや説明寄りで、俳句的な「飛躍」がもう一歩。
添削案
枯れすすき そよぐばかりの 夕静寂
枯れすすき 風の名もなき 夕静か
風を直接言わず、余白を残すと詩性が増します。
🔔② 梵鐘に涅槃幻視す 冬黄昏
評価:90点
良い点
「梵鐘」と「涅槃幻視」の宗教的イメージが響き合い、深い精神性があります。
「冬黄昏」がよく効いて、静謐で沈潜した時間を作っています。
格調の高い一句。
惜しい点
「幻視す」がやや説明的・散文的。
動詞が硬く、俳句のリズムを少し損ねています。
添削案
梵鐘に 涅槃の影や 冬黄昏
梵鐘や 涅槃を仰ぐ 冬黄昏
切れ字を入れると、余韻と格調がさらに締まります。
🐈③ 炬燵猫 足指だけで 会話かな
評価:92点
良い点
非常に映像的で、読者が微笑む生活句。
「足指だけで」という観察の細やかさが秀逸です。
「かな」の使い方も自然で余韻があります。
惜しい点
「だけで」が少し説明的。
添削案
炬燵猫 足指交はす 会話かな
炬燵猫 足指そっと 会話かな
語を少し詩的にすると完成度がさらに上がります。
🌇④ オレンジの夕陽あたたか また明日
評価:80点
良い点
素直で明るい情感。
読後感がやさしく、日常詩として好感。
惜しい点
「オレンジ」「あたたか」「また明日」がやや散文化・標語的。
具体的な映像より感想が前面に出ています。
添削案
オレンジの 夕陽背にして また明日
窓染めて オレンジの夕 また明日
感情を直接言わず、映像に託すと俳句らしくなります。
🍊⑤ 柚子の香の入浴剤や陶然と
評価:89点
良い点
嗅覚と身体感覚がよく伝わる一句。
「陶然と」が心地よい余韻を生んでいます。
冬の生活感が鮮明。
惜しい点
「柚子の香の入浴剤」と説明がやや長い。
添削案
柚子湯かな 香にほどけゆく 身の力
柚子の香や 湯に身を預け 陶然と
少し圧縮すると俳句の切れ味が増します。
🏆総合評価(5句平均)
総合点:88点
季語の選び方が安定しており、季節感が明確。
感覚描写(視覚・嗅覚・触覚)が非常に上手。
生活句と精神性のバランスも良い。
今後さらに伸ばすポイントは: ✅ 説明語(〜で、〜だけ、〜す)を減らす
✅ 感情を言わず、映像で語る
✅ 切れ字・余白の活用
全体として、すでに「人に読ませられる俳句」です。
次作も楽しみにしています。