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『ジャンクフィクションシリーズ』没エピソード公開!

※この近況ノートは、『ジャンクフィクションシリーズ』(https://kakuyomu.jp/works/16818792440269803304)の没エピソードです。
 あくまで没なので、そのつもりでお読みください。


第22話 あの子(没)
 これは、誰だろうか?
 古い写真。幼い僕の隣で、微笑んでいる同じぐらいの少女。ショートの黒髪と対照的に真っ白な肌。良く出来た人形のような整った容姿。
 撮られた場所は、実家の近所のようだ。
 実家が老朽化により、引っ越して更地にするのに整理していたら出てきたそうだ。
 唐突に、独り暮らしの僕のマンションに送って来た。
 最初のうち、幼い頃を懐かしんでみていたが、その写真で手が止まった。
 その後も、少女は写真に度々写っている。
 おかしい。こんな少女、記憶にない――にも関わらず、相当親しそうに見える。
 僕が忘れているのか? だが、あまり親しくなかった相手ならともかく、こうまで親密だった相手を忘れるものだろうか?
 僕は引っ越し先の実家に電話を掛けた。
「なあ、この写真に写っている女の子って――」
「は? 女の子?」
 電話に出たのは、父だった。
「そう、同じ年ぐらいの女の子!」
 しばし沈黙。
「ああ、ハルカちゃんか……」
 なぜだろう。声が暗い。
「それが、この子の名前?」
 ハルカ――それを聞いても、思い出せない。ただ、焦りだけが積もっていく。
「ああ、そうだ。覚えていないなら――」
「何かあったのか!?」
「本当に、覚えていないんだな。だったら――」
 次の言葉に息を飲んだ。
「忘れろ。その方が良い」
「そんな!? どういう――」
 ガチャン!
 唐突に電話は切られた。
「何が……あった?」
 僕はもう聞こえない電話に向かって呟いだ。

 その晩、夢を見た。
「供物ヲ、捧ゲヨ」
 その「声」は、そう告げていた。
 神社には、老若男女問わず村の皆が集まっている。
「どうする?」
「どうするって……するしかない」
 大人たちは何やら話し合っていた。
 夜になると、僕は着替えさせられ、神社の本殿の中にお供え物と共に閉じ込められた。
 僕が扉をたたいたが、鍵が掛かっているのか開かなかった。
 すっかり諦めた時だった。
「こっち!」
 少女が、ハルカが居た。
「着替えて!」
 僕は有無を言わさず、衣服を取り換えられた。少女用の白いワンピースを着た僕は、夜闇には少女に見えたかもしれない。
「いい? 私のことは忘れて生きて」
 静かだが、逆らえない口調だった。
 僕は少女に促されるまま、鍵が開けられた出口から出た。

 翌朝、ハルカの死体が山中で見つかった。衣類は無残に引き裂かれ、内臓を食い荒らされたかのように周囲に飛び散っていた。

 そうだった。僕はそのまま――目覚めると、じっとりと汗が滲んでいた。
 両親が実家を移ったのも、本当は恐れていたのだろう。
 忘れていた方が幸せだったかもしれない。だが、再び忘れることはできそうになかった。


 以上です。没になった理由としては「弱い」の一言に尽きます。何も目新しいものがない。何も意外な展開がない。正式な第22話も大概ですが、それにも勢いで負けています。
 没にしたので確認も不十分なので、誤字脱字、誤用等もあるかもしれませんが、ご了承ください。

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