今年の冬は、近年の中ではまあまあ冬っぽい冬だったかなと思う。
その冬が終わりそうで、少し悲しい気持ちになる。
人生〇度目の冬ともお別れである。
季節というのは、抗いようがない。
力強く訪れて、静かに去っていく。
そこに自分は、ただ在る事しか出来ない。
子供の頃は冬が一番好きな季節だった。
冬の厳しい風に身を晒していると、とにかく思考が深まるのだ。
自転車で坂道を下ると、手袋をしていない手は感覚を失うまでに痺れた。
その感覚は、異様に自我を研ぎ澄ませてくれた。
骨身に染みるという言葉がある。
背骨の奥底まで冷たさが入ると、そこでようやくたどり着く思考があると気づいた、中学の頃になる。
春が来るのだ。
春というのは一番残酷な季節だ。
春の思い出と言うのは、たとえ美しいものでも、思い出すたびに異様なまでに残酷に感じる。
出会いも別れもそこに含有しているからなのだろう。
それでも人は春を待つものらしい。
俺は春など待たない、季節は待たずとも巡って来る。
そういった近況である。