昔、本屋さんに行くと、読んでみたい本、発刊を待っていた本、なんとなく手に取った本、片っ端から片手に積み上げて、合計金額なんかどうでもよくて、平均10冊ぐらいを毎月のように買っていた。
本屋の匂いが好きだった。
大型書店も小さなまちの本屋も、インクと紙の匂い、読まれるのを静かに待つ整然とした棚、そして、レジ前にある、ブックカバー。
本を今の形にした発明家をたたえたい。
出版社によって、紙の厚さや色、インクも字体も行間も違うので、それを楽しむのも好きだ。
同じ太宰作品も、出版社毎に印象が変わる。
その違いを見るのも好きだし、同じ海外作品が翻訳者によって別物になるのも、人が書いているという実感がある。
この出版社のものを読むなんて、私もレベルが上がってきたな、なんて、勝手にランキングしたりもする。
ぺらりとめくる音と、その時の季節、脳に染み渡らせるように文字と描かれる景色が記憶されていく。
初めての本は、ギチギチと音がして、まだあなたのものではないのですがね、と言わんばかりだが、読み進めると、まあ、あんたの手も悪くないと思うよ、とこなれてくれる感じがたまらない。
久しぶりに開いた本、紙の感触と文字を見た瞬間、記憶の扉が開き、懐かしさやワクワクがじわじわと押し寄せる。
本はやっぱり紙だな、と思う。
今はスマホの時代。
これはこれで面白い。
画面で読む楽しさはまた別物だろう。
それてもやっぱり、書籍に軍配が上がる。