秋冬遥夏

魔法の才に恵まれなかった私は、街の中心部から外れた売春街で娼婦として働いている。ある日、そんな私を指名したのは、ブロンドの髪を結き、花柄のドレスに身を纏った、私と同じくらいの少女…

人間によって様々な種が作られ、食べられ続けてきた食べ物。そんな食べ物が進化を遂げ、怪異〈タベモノ〉と化した未来の日本。全員が食事に怯える中〈喰い人〉として働くナユタは、秋刀魚を片…

私の想いを乗せた透明な糸は、物体の輪郭と輪郭を軽やかになぞっていく。世界を駆け回るその糸の行き着く先は、いつもビビヌッコアユナの元だった。 ▢自主企画「もかあわ」審査員奨励賞・…

失恋した帰り道、公園のすべり台の後ろに女子大生を見つけた。彼女も私と同じ恋愛に傷つく女の子で、ふたり一緒に暮らしてみることになった。 ▢カクヨムweb小説短編賞2023中間選考通…

芦屋公園で夜に開かれるアシヤノマルシェ。そこについての情報を集めるうちに、いつしか僕は魅せられてしまったのでしょう。 ▢『カクヨムweb小説短編賞2023:円城塔賞追加選評』にて…

アメリカのUnited Onion社が開発した特殊技術がきっかけで、食べものが町中にあふれるようになった未来の日本。ラーメンで編まれたニットを着て、シューマイのイヤリングを揺らし…

放課後、彼女と駅前にあるカフェに集まる。親がうざい、英語の教師がむかつく、クラスメートが鼻につく。あれも嫌い、これも嫌い。そういった世の中への毒を吐きあっているうちに、恋に落ちて…

千葉県にある教習所に免許合宿にきた私は、エアコンの室外機に野花が置いてあることに気づく。毎日と変わる花の謎を追った先に、予想もしない結末が待っている。

「別れない？　わたしたち」 衝動的に別れ話を切り出したことを後悔する私。思い出の喫茶店。あのとき彼と一緒に食べたレモンタルトが今日は苦い。ふと窓の外を見ると、季節外れのサンタが現…

アメリカのUnited Onion社が開発した、人から人（もの）へ、目で見てわかる形で愛を伝えられる「愛情チャージャー」。彼女は僕が夜にたくさん送った愛を、いつも翌朝、シナモンに…

閉鎖された現代社会において、感情を抱えきれずに死んでしまう人（自殺者）が増えたため、ある企業が作った感情を預けられるコインロッカー。そこには人間のさみしさや悲しみ、そして幸せが詰…

卒業式の帰り道。3年間を共にした朝倉とふたり、毎日と歩いた通学路をゆく。駅に着くまでは25分。それぞれの思いを胸に、僕らの青春は終わりへと歩きだす。 ▢大学文芸部誌文化祭号202…

町外れにあるスクラップ集積場にて生きる僕とガラクタ兄貴。歩くだけで傷つく毎日に涙を流すような僕でも、夢や守りたいものができたとき、ほんの少しだけ強くなれる。 ▢大学文芸部誌新入生…

コンビニでホットコーヒーと一緒に春を買った。 ▢第三十三回文学フリマ東京短編集『雨と音』掲載作品

少子高齢化や生物多様性などの考えを通して作られた、動物と人間を掛け合わせた生物「キメラ人」が生きる未来の日本。こんな世界を生きる「偽物ドラゴン」の物語。 ▢カクヨム甲子園2020…

先月からツチノコと同棲を始めた。 ▢高校文芸部誌三年冬号掲載作品

今年も鎌鼬がやってくる。