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異世界にいこう

 風呂上り。

 洗濯機の上に置いていた着替えのパンツを履こうと広げたところでふと手が止まる。

 穴が開いている。

 いや、穴なんて生易しいものじゃない。

 トランクス型の縫製部分だけを残して布地部分がすべてどこかしら破れている。

 これをどう表現したものか。障子の骨組みだけ残してすべての面が破れている感じ。ロックだ。

 どうしてこんなことに……いや、どうしても何も、長く使い続けていればいつかはこうなるだろう。

 なんかもう、ストラックアウトの達成直前みたいになっとる。


 これはさすがに交換の時期か……と思う。

 しかしぼくの中のもうひとりの自分――先延ばし大魔王が「あと2回、いや、うまくやれば3回はイケる」と囁く。

 仕事のデキるぼくはとりあえず両者の意見の中間をとって、あと1回履いてそれから今後を考えようということに。

 まず左足を通す。そして残った右足も。

 そこで事件は起こった。

 ひとつの穴に両足を通してしまうミステイク。それは穴が多すぎたことが招いた悲劇だった。

 つんのめって崩れるバランス。

 危ない――。

 傾いた身体を支える右足を踏み出そうとするも、その右足は途中まで足を通しているため自由が利かない。

 危ない――。

 強引に右足を踏み出す。その瞬間。

 バルンッ

 世界が回る。弱り切ったパンツが断末魔の声を上げて弾ける。パァンツ!

 どうにか転倒せずに済んだが、なぜか目の前には突然の壁。白い壁。どこだここは。

「ファッ!?」

 驚いた。洗濯機の方を向いていたはずなのに、いつの間にか勢いで身体ごと反転していたらしい。

 気付けば、背にしていたはずの壁と距離5センチで向き合っていた。

 足元にはさっきまでパンツだった端切れが散乱していた。

 パンツって、こんな壮絶な散り方します……?

 なんかもう、ちょっとした異世界転生を体験した気分です。




 異世界といえば。

 カクヨムを運営するKADOKAWAは先日、26年3月期通期決算で主力の出版事業が10億円の営業赤字に転落したと発表しました。

 同社は「なろう・異世界系」などの特定ジャンルへの偏重が収益悪化を招いたと分析しており、今後は抜本的な構造改革に乗り出すとしております。

 要するに、異世界転生しすぎたということですね。

 原因分析としては若干単純化し過ぎているようにも感じますが、要因のひとつであることは間違いなさそうです。

 さて、今後の『抜本的な構造改革』というのは具体的にはどのようなものになるでしょうか。

 ひとつはリストラを含む量的な構造改革でしょう。不採算レーベルの統廃合もあるかもしれません。

 もうひとつは質的な構造改革でしょう。コンテスト等の部門構成や審査方法の変更といったところでしょうか。もちろん、厳しくなる方向で。

 自分は異世界転生ものをあまり書いてきませんでしたが、かといって無関係ではいられないんでしょうね。

 今のカクヨムの牧歌的な雰囲気はとても好みなのですが、どうかそこに影響するようなメスを入れないでおいて欲しいなと願うばかりです。

 あ、異世界転生モノが下火になる前に一度くらいめっちゃ長いタイトルの書いてみたい気はします。

 「突然トラックにはねられて飛ばされた異世界でもいきなり魔導トラックにはねられてアッチとコッチの世界を行ったり来たりでバインバインしてる件」みたいな。

 誰が読むんだ……。





 異世界といえば。

 なんとなく「~転生」とか「~転移」と付けたくもなりますが、転生も転移もない、架空世界でのお話であればそれは「異世界モノ」と呼んで差し支えないのですよね?

 だとすれば先日投稿しました拙著『紅三号』も異世界モノになるのでしょうか。

 難しいですよね。異世界モノ。

 何が難しいって、やはり現実世界にないものが多数登場することになるわけですから、それらのビジュアルを読者の脳内に描かなければなりません。

 とりわけ外見の描写が苦手なぼくとしては手を出しづらいジャンルだったりもします。

 もしも自分が上手に絵を描けたら、小説の投稿と一緒にドヤァ!と近況に貼ったりできるのに……と時どき妄想したりもしております。


 そしたらですよ。

 そんなぼくの妄想に、ひとすじの光が差しました。

 なんと猫小路葵さまがですよ。

 上記の『紅三号』にAIイラストを寄せてくださいました……!

 アルバート・レイヴン中尉ですよ!

 わーいわーい!

 願ってみるもんやー!!

 ありがとうございます。ありがとうございます!

 
 猫小路葵さまはぼくとほぼ同期の書き手さんで、主に短編を書かれているという共通点もあり、いつも気になっている方です。

 というより、その精力的な執筆活動、質と量の両立が凄まじく、それはもう湧き出る泉の如しです。
 キィー!羨ましい……!

 そんな猫小路葵さまの書斎はこちら。
 https://kakuyomu.jp/users/90505

 葵さん、本当にありがとうございました!

↓頂いたイラストです!

22件のコメント

  • 面白すぎる近況にフフフフフフフと息で笑いながら読み進めておりましたら!
    わーお。ご紹介ありがとうございます!
    うれしはずかしです(*ノノ)
    「紅三号」は本当に素晴らしいお話でした。
    改めまして、作者様からの温かいお言葉をありがとうございます!

    あと、皆様ご承知だとは思うのですが、こちらAI生成イラストであることを書き添えていただけますと幸いです。
    それと、パンツさんに「お疲れ様でした」とお伝えください。
  • パンツが破けただけで異世界転生しなくて良かったですね^ ^;
    お怪我はありませんでしたでしょうか。

    >何が難しいって、やはり現実世界にないものが多数登場することになるわけですから、それらのビジュアルを読者の脳内に描かなければなりません。

    だからこそナーロッパが主流になるんですよね。
    中世(と言うより近世)ヨーロッパ風の街並みで多くの場合、城塞都市。詳細な説明を入れずとも「ああ、こういう街ね」と読者の頭に風景が浮かぶ、
    使いように寄っては便利ですよね。
    まあ、賛否両論ありますが。
  • あ😮AIイラストって書いてくださってますね。
    見落としておりました。失礼いたしました💦
  • 葵さん、こんばんは!
    いえいえ、ご指摘の通りです。
    返信の前に取り急ぎ修正させて頂きました。失礼しました……!

    パンツさんには長年の活躍を謝して手を合わせておきました。

    パンツさん、「酷使し過ぎや!クソが!」言うてました。

    自分の頭の中にしかないもの、文章が拙く作品に落としきれなかったものをこうしてイラストという形にして頂きまして、本当にありがとうございました!
  • 異世界転移もの、書いたことないですね…。
    サクさん書いて!バインバイン…!!

    パンツで異世界転移しなくて良かったです。寿命でしたね…!!

    まだ拝読できてないのですが、こんなにカッコいい人なんですね…!!葵さんのイラスト素敵です!良いなあ…!!😊✨️
  • 国内出版での営業利益が10億の赤字とはいえ、出版分野のセグメントで言えば41億の黒字は叩き出していますからね。
    異世界ものの出版に主力を起きすぎた影響が出てしまったということは、おっしゃるとおりで、門の通りが狭くなってしまうかも。
    逆に言えば、同類のストーリーには厳しくなるけど、テンプレから脱却したものに注目が寄せられるかも?(個人的期待です)
    幅の広い市場に読者の関心が寄せられると出版分野も面白くなるかもしれませんね。

    なので、バインバイン……期待していいですか?(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク
  • 英さん、こんばんは!

    驚異の体幹を発揮して無事でした!たぶんふだん使わないところにチカラが入ったので、2日後くらいに原因不明の謎の筋肉痛として現れると思います(笑)

    ナーロッバ。とかく批判に晒されがちで名前がすでに悪意を含んでいるような言葉ですが、主題でなく書割として使うならとても便利だと思うのですけどね。
    一方で、むかし読んだファンタジー小説で巻ごとに入るその世界についての少し冗長にも思えるような解説にワクワクしたのも確かなので、結局は使いどころと使い方なんでしょうね。
  •  リアルでも人を爆笑させないと気が済まないんですか、サクさんは?
     すげえビジュアルが脳内を駆け巡り、疲れたから寝たいと思ってたのに目が冴えましたわ。
     そういえば「水槽に沈めた指輪」が大人気で、ミステリ部門総合週間2位じゃないですか。おめでとうございます。……なんか釈然としねえ(笑)。やっぱりカクヨムにはコメディ部門作ってほしいわ。そっちでもぶっちぎりでトップ取れるでしょうし、超釈然とする。
     冗談はさておき、サクさんの異世界はものすごいですってば。別に今ある異世界ものは意識しなくていいと思うんですよ。わたしの好きな作家さんは、ファンタジーは事実は書かないが真実は書くものと言っておりました。想像力という翼を広げればどこへでも飛んでいけ、その世界の内なる真実が、ときに現世のまやかし、欺瞞、意味のない些事を照らしだす。そんな物語であれば何でも良くて、要するに自由でいいのです。
  • パンツでバインバインと空目しましたすみません。

    異世界の、しかも転生までやりましたが。

    外見は困ってますよねぇ。
    異世界っていわゆる「なーろっぱ」と言う前提に立ってますから、AIに書かせるとドレスなんですよねぇ。
    アオザイ風だったり、エジプト風だったりしてるんですけど、わたしの中では。

    中華は漢字で示せますが、オリエンタルはカタカナだとヨーロッパになっちゃうし、難しいです。
    わたしも誰かに絵をかいてもらえないかと。

    でもねぇ、サクさんの話ってどこか異世界風って言うか、パラレルワールド風。そのまま外見説明しなくても、話の流れには大きな問題ないですし(実感済み)、外見気にせず、サクさんの思う異世界書けばいいと思います!

    魔法も竜も出していない異世界書きより。
  • こんばんは。
    ここは壮絶に散ったパンツに寄せる形で異世界転移ものを書きましょうよ。
    というか、そういう始まりかと思ったらノンフィクションだったのですね(笑)。
    こけて怪我しなくて良かったですね!

    紅三号、素晴らしい異世界モノでした!
    イラストかっこいいですね!
    彼がこの表情で見ているものはなんでしょうね。

    私も、転移も転生もなければ竜もでないし魔法もない物語を異世界ファンタジージャンルでカクヨムコンに出したことありますが、非常に場違いでした(笑)
  • 心春さん、こんばんは!

    バインバインはですね、現世と異世界の両方でトラックに追いかけ回される(轢かれると異世界または現世送りにされる)という、出オチみたいな設定だけ浮かんでそれ以上の展開が思いつかなかったボツ作品なのですよ。
    ヒッチコック監督オマージュ……!

    イラスト素敵でしょう。いいでしょう。
    ふふふ。

  • 琴音さん、おはようございます!
    「とにかくたくさん作って売れば儲かる」の時期は過ぎたということなんでしょうね。
    過度に間口が広がり続けることはAI作家を出版社が推進する動機づけにもなるのではと思ってましたが、蛇口を絞り始めたいまどちらに転ぶかわかりませんね。
    少ないパイを奪い合うのか、ハンドメイドに回帰していくのか。

    これはいよいよバインバインが立ち上がるときが来たようですね……!
  • アオノソラさん、おはようございます!
    うそーん、と思っていま見たらミステリ短編で週間一位になってました……!
    こんなんダメです。ちゃんとミステリー書いている方に怒られるので触れずにそっとしておきましょう。
    というより、いつも消去法でジャンルを選ばざるをえない状況を作っている運営さんが悪い気がします。
    ただ自分の性格上、コメディ部門ができても選択しない気もします(笑)
    「これ面白いぞーコメディだぞー」とみずからハードル上げるのってそれもうドMじゃないですか……

    「ファンタジーは事実は書かないが真実は書く」すごく良い言葉ですね。自分が考えたことにしてどこかで使いたいです。
    仰る通り、ファンタジーは自由で、作家性を出す余地は無限に残されております。
    批判されるべきは過度なテンプレ依存であってジャンルではないと思うんですけどね。
  • (Xで、ちょっと押されていたのをさらに一押ししてきたのは秘密。あれで一位に行くなって思ってたら、やっぱりでニヤニヤしてます)
  • (誤字だらけだったので再投稿)
     ほんとだ! 一位になってる! やったあ、ここまで行くと一周回ってある意味勝利! 運営はやっぱり「志乃亜サク」部門を作るべきですね。サクさんは選ばないから誰もエントリしないかもしれないけど(笑)。

     急に真面目な話しますけど、これから出版社は二極化するんじゃないですかね? 一つはどうしたって市場最適化作品(普通に面白いがテンプレ。要はカップ麺みたいなもの。うまいが飽きる))しか出力できないAIには書けない、サクさんのみたいな人格が滲み出た作品(個人店の妙に凝った、万人ウケしないけど味や店主が忘れられなくなる蕎麦)を発掘する方向。これは伝統的な編集方法で、普通じゃない、偏ってるけど、心に残るし面白い作品を、一般にも受け入れられるように翻訳して出版。でもノイズ=個性は消さない。これは小規模出版社とかがやりそうですね。
     もう一つはさらにマーケティングを精緻にして、これは絶対メディアミックスして売上が何倍にもなりキャラクター商品も売れるぞーっていう厳選されたIPだけに注力する方向。万人に受けるレシピを元にすげえ食材の質や宣伝に金をかけて売る超高級パスタを開発する感じですかね。こっちはAIが大活躍するでしょう。カドカワみたいな大企業はリスクを取らないので、前者はできず後者に注力するでしょうね。もし前車がもう少し復権したら、大企業も再度手を出すかもしれないですけど。
  • パンツが裂けて異世界へ。新しいパターンかもしれませんね。いつも楽しいお話ありがとうございます。

    猫小路葵様のイラスト、素敵ですね(*´ω`*)
  • さくらさん、こんにちは!

    ナーロッパの初出作品がどれなのか存じ上げないのですが、ひとつの発明だとは思うのですよね。
    現在はテンプレという言葉に若干ネガティブな印象がつきまといますが、先人が積み上げてきた世界観をある程度拝借することで設定説明にあまり文量を使うことなく作者と読者が同じ景色を見ることができるというのは素晴らしいことです。
    もちろんそこには作者独自の解釈やアレンジが加わることになるので、オリジナリティは確保できると思います。
    同じ制服を着た学生から個性が失われるわけではないのと同様、ナーロッパ作品でも同じものはひとつもないと考えます。

    ぼくの作品がパラレルワールド的に見えると仰って頂くのは、たぶんぼくにヨーロッパどころかナーロッパの知識もなく、身近なところから材料を調達しないといけない事情によるものかと思います(笑)

    Xで推して頂いているのですね。
    いまはSNSを一切やってないためそれを見るすべがありませんが、ありがとうございます……!
  • 幸まるさん、こんにちは!
    どちらかというと、現世での役割を終えたぼくのパンツが今頃どこかの異世界で活躍してるような気がします(笑)
    日常の中にも異世界転移は隠れてます。油断してはいけません。

    うふふ、アルのかっこいいAIイラストを頂いてしまいました。
    これだけ素晴らしいものが生成できるとなると、そろそろ書籍の表紙にAIを使用するところも出てくるかもしれませんね。

    古典的なファンタジーといえば剣と魔法と王子と姫、そして竜が定番ですが今の傾向は変わってきているんですかね。
    せっかくカクヨムにいるからには異世界ファンタジーの上位にいる作品をそのうち読んでみたいなと思いつつ、話数の多さに尻込みしているうちに早一年が経ってしまいました……。
  • アオノソラさん、こんにちは!

    志乃亜サク部門、いいですね。
    そんな羞恥プレイみたいな部門、ぜったいエントリーしませんけども(笑)

    たまに投稿タイミングと瞬間最大風速の関係でランキング上位に顔を出してしまうことがあるのですが、そういうときに限ってジャンルを適当に、あるいはふざけて選択していたりします。そうなるともう、風が通り過ぎるのを待つしかありません。(すまなんだ……!)と思いながら。応援通知に「@****」といったお名前が増えてくると(本当に!すまなんだ……!)となります。

    KADOKAWAの決算がプラットフォームとしてのカクヨムにすぐに影響することはないと見ますが、公募・書籍化を志す方々には徐々に影響してくるのではないかと思います。

    作品として面白い、出来が良いことは当然として、「売れるかどうか」が指標としてより重みを増してくるのではないかと。

    とはいえ赤字の主要因である人件費のコストカットも進むでしょうから、人力による作品審査の精度向上はなかなか難しく、AIによる下読みなどを導入する動機がより高まるのではないかと思われます。

    おお、怖い。
  • めぐるさん、こんにちは!

    パンツは時空を超える(笑)
    むかしの異世界転生はトラックか雷が主流だったと聞きましたが、いまのトレンドは何でしょうね。

    イラスト、ほんと素敵ですよね。
    少しAIイラスト生成を触ってみたことがあるのですが、この色味とタッチはなかなか出ません……!
  • こんばんは🌆
    やっぱ、異世界によっちゃうと…といいたいですが、たぶんチート転生無双溺愛ハーレムとか、ソッチですよね…?

    たまーにコミカライズは読むのですが、似たり寄ったりになると買いませんね…💦
  • 岩名さん、こんばんは!

    世の中にはチート転生無双溺愛ハーレムものが氾濫しているとは聞きますが、そういえばそれそのものズバリな作品は見たことありませんね……。
    いま子供と一緒に『reゼロ』というアニメを少しずつ観ているのですが、これが近いですかね。とても面白いです……!
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