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    福岡異世界移転史 早良署刑事事件簿シリーズ

    福岡県が異世界へと丸ごと転移して5年。 街は未曾有の復興特需に沸き、ネオンの光は以前にも増してギラついている。だが、その華やかなアスファルトのすぐ下では、異世界の不条理な因果(バグ)と、それに群がる巨大資本や宗教組織の欲望が、どす黒く発酵していた。 現場の異常を告げるのは、魔法の杖でも水晶玉でもない。エラーを吐き出す最新型の観測タブレットと、路地裏に漂う古い重油と血の匂いだ。 主人公は、福岡県警・早良警察署の強行犯捜査係に所属する、ヨレヨレスーツの警部補・三浦慎吾。 かつて最前線で異界の不条理を粉砕した伝説の部隊「第1班」の副班長であった彼は、今や窓際へと追いやられ、冷めたコンビニのおでんを啜りながら、街の裏側に不法投棄された「世界のゴミ」の後始末に追われている。 彼と共に事件に挑むのは、異界のバグを強制終了させる「奇蹟否定」の力と深刻な中二病を併せ持つ中学生・後藤零。そして、最新機器を駆使するも常に理不尽な事後処理に追われ、ボーナス払いのスーツをボロボロにするエリート若手刑事・瀬戸健太郎。 彼らが対峙するのは、魔王でもドラゴンでもない。 暗躍する巨大ゼネコン、違法な因果の取引、そして人間の「業」そのものが引き起こす、極めて現代的で生々しいオカルト犯罪だ。 理不尽な神意すらも「物理法則への不正アクセス」として調書に叩き込み、大人たちの薄汚い利権と始末書の山の中で、彼らは福岡の「昨日の続きの日常」を強引に守り抜く。 ■ 主要エピソード File.01『鷲尾山の呼声』 室見川の干潟に打ち上がった、細胞が「酸化鉄」に書き換えられた無残な遺体。早良区の日常の足元で進行する、地元ゼネコンと異界の宗教組織による癒着。三浦たちは、愛宕山の旧炭鉱跡から這い出る「鉄の悪意」に、警察の意地と少年の「否定」で立ち向かう。 File.02『地下鉄七隈線・未登録駅の怪』 深夜の七隈線に出現した、路線図に存在しない駅。延伸工事の地盤沈下事故で消えた技術者の執念が、マジック粒子と結びつき空間をバグらせた。乗客の「記憶」を徴収する亡霊たちに対し、三浦は銃ではなく、忘れ去られた「古い設計図(誇り)」を突きつける。 File.03『中洲・消失する足跡(ミラー・ストーカー)』 欲望渦巻く中洲のネオン街で、鏡を見るたびに顔が別の女にすり替わるという容貌盗難事件が発生する。無限の自己愛が産み出した鏡面都市の迷宮へ踏み込んだ三浦が見たのは、かつての情熱を持っていた「十年前の自分」の姿だった。 File.04『証拠品保管庫の咆哮』 早良署地下に収められた呪物が、AMDI(マジック粒子阻害装置)の暴走により一斉に活性化。署員たちが過去に隠蔽した不祥事や罪悪感が実体化し、警察署は狂気の監獄と化す。逃げ場のない密室で、三浦は最悪の決断を下す――自らの左手と引き換えに、数千人分の「業」を丸呑み(デリート)するという選択を。 File.05『英雄養成の罠』 天神の雑居ビルに作られた未認可の冒険者学校。そこは、若者たちの「英雄になりたい」という承認欲求を搾取し、危険な因果の結晶を精製する悪徳のラボだった。資本主義の力業で若者を食い物にする「人造英雄」の虚飾を、失われた左手に絶対的な虚無『凪(なぎ)』を宿した三浦が、冷徹に消し去っていく。

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