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妄想出エジプト記

紀元前1600頃のお話。
エジプトではちょいちょい地震が起こっていました。

「おい、また地震だよ」
「てか、ナイル川赤くね?」

地震の影響なのか、大量に魚が死んだり、ぶよが増えたり、それを狙ってかカエルが這い上がってきたりしました。
これ幸いにと、死んだ魚を獲って食べた人たちも病気になったりして散々です。
おまけに天候不順で、いつもは降らない雹が作物までダメにしました。
こんなもので、体力のない子供から順にどんどん亡くなっていきました。

「もうダメぽ」
「ファラオたすけてー」

大変な社会不安となりました。
しかし、別のことを考えている者がいました。
エジプト人の奴隷となっていたヘブライ人の指導者です。

「これって天罰じゃね?」

思い立ったが吉日生活。
彼はファラオに直談判に行ったのでした。

「ヘブライ人を解放しろください」
「だが、断る」

当たり前、当たり前、当たり前体操♪
そんなフレーズが浮かんだかは知りませんが当然却下です。
どんな文明でも、富裕層市民の裏にはかならず奴隷階層が必要なのです。
なにしろ、その奴隷の数は200万人(盛りすぎか)とも言われています。
おいそれと解放はできません。

「I'll be back」

指導者は捨て台詞を吐いて去りました。
いや、二度と行くかボケって感じですが。

そして指導者は家出の計画を立てる。
指導者が大大大大大好きな200万人の奴隷と一緒にです。
盗んだ金品と走り出す。
行先もわからないまま。

「おのれモーセ! 成敗してくれる!」(※1)
「ファラオ! 殿中でござる!」

ムカ着火ファイヤーのファラオは軍を差し向けて追います。
エジプトの繁栄を支える貴重な労働力です。

「絶対に帰ってきて欲しいマン」
「ぶっころーす」

残念ながら血に飢えた軍隊にはファラオの気持ちが通じませんでした。

そんな逃走の中、ヘブライ人たちは葦の海に行く手を遮られます。
海というか、地中海側の広い汽水域ですね。(※2)

「ぎゃーす!」
「エジプト軍が来てるぅ!」

絶体絶命の背水の陣でした。


◇◆◇ 


そのちょっと前。
地中海の向こうで歴史的惨劇が起こりました。

ミノア噴火です。
古代地中海の交易の要衝として栄華を極め、周辺国からはアトランティスとも称された島国でした。
環状に設計された都市の中央には巨大な宮殿があり、オレイカルコス(真鍮)※3を使って装飾されていたそうです。
いまいちピンときませんが、とにかく凄そうです。

で、そんなサントリーニ島が、海底火山の爆発的噴火に見舞われました。
島の大半が木っ端ミジンコになる大惨事です。
グーグルマップで見ると、かつて円形だったであろう島は、いまでは三日月型です。
うわぁ、としか感想が出ないです。

で、大噴火した後で島が海ごと吹っ飛ぶわけですよ。
すると海水面が凹んでしまうのですね。
当然、周囲の海水が流れ込んでくるのですが、それで終わりません。

勢いづいた引き波は、凹んだ深さと同じ高さまで盛り上がります。
それが終わると、また周囲に引き返していくのです。

まあ、何にせよアトランティスはアボンです。
後世の人のために、もう少し正確な記録を取っておいて欲しかったです。

プラトン! お前のことだよ!

◇◆◇ 

「あれ、葦の海の水が?」

そうなのです。
ミノア噴火の引き波によって、葦の海がみるみる引いています。
浅瀬は歩けるほどになりました。

「奇跡! 奇跡!」

誰ともなく叫びました。

「チャーンス! いまだ! 行ったれぇぇ!」

チャンスを逃さない者だけが歴史に名を残すのです。

水が引きたての海底なんてとても歩けたものではないですが、死ぬよりましです。
文字通り、200万人が死ぬ気で駆け抜けました。
思いを一つにした集団の行動力は恐ろしいのです。

そんなこんなで大体のヘブライ人が渡り切った頃……。
エジプト軍も頑張って追い付いてきました。
いずれ追い付かれるなら、上陸時に迎撃するのが有利。

「賽は投げられた」
「それ、別の偉人の言葉だし!?」

そんな混乱の中で、いよいよ覚悟完了したその時でした。

沖のほうから海が押し寄せてきたのです。

それは屈強なエジプト軍をあっさりと押し流してしまいました。
ミノア噴火の引き波の戻りでした。

「えっと、あー、うん。奇跡奇跡」

肩の力が抜けた指導者はそう言って納得しました。

「指導者の名前ないの困るんだけど?」
「じゃあ、エジプト人が言ってたモーセでひとつ」

こうして指導者はモーセを名乗りました。
おんぶにだっこのヘブライ人たちを、約束の地まで連れて行くという胃の痛い仕事が始まったのです。

「お前ら、勝手なことするな! 言うことを聞け!」

やんちゃすぎる同胞を黙らせるために、十のルール(※4)も決めました。

その内容を見るだけで、彼らの旅路の酷さが伺えるというものです。
まじお疲れ様でした。


(※1)モーセとは、エジプト側からの呼称が語源らしいです。しらんけど。
(※2)紅海とされていますが、地中海説もあります。しらんけど。
(※3)のちのオリハルコンですね。しらんけど。
(※4)のちの十戒なんて言わないよ絶対。しらんけど。

2件のコメント

  • 面白かったです(>_<)
    聖護院大根さまの味付けで、過酷な旅なのに思わず笑っちゃいました(笑)
    いや、本当。きっとファラオは奴隷たちを労働力として取り戻したかったですよね。
    モーセの海割りに噴火が関係してたっていう説もあるんですね!
    知りませんでした~。でも、ありそうですよね。大規模噴火で島の形が変わっちゃうくらいなんですもん。
    歴史の中の人のドラマも、面白いなあと改めて思いました(*´▽`*)
  • あちらへのコメントありがとうございます!
    十の災いから、十戒までの妄想コメディでした。
    ミノア噴火とは時期が合わないだろうし、十のルールとか罰あたりメガ盛りでお送りしました。
    昔のことを調べてると、余計なことばかりに寄り道して妄想がはかどりますよね!
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